高校3年生ともなれば、忙しくなる。進路も本格的に考えるし、卒業に向けての活動も進められるし、何より志望校に合格するために死に物狂いで勉強しなければならない。
 始業式。高校3年生になったという実感で満ち溢れていた。
 始業式が終わって全員が戻ってきた教室の中はとてもざわついていた。3年生では何をするとか、もう志望校は決まっているかとか、教科書を見ながら、これは難しそうだとか。
 あとは、男子の方で社長がどうしたこうしたみたいな話をしている。何となく耳を傾けていると藤原(ふじわら)君という人が将来会社を継ぐらしい。
 笑っている藤原君を見ていると偶然振り返った時に目が合ってしまう。慌てて目を逸らした。男子と目が合うのはとても気まずいと実感した。
 私は正直、会話に入れなかったし、教室に溶け込めてもいなかった。陰でも陽でもない私は昔からとっつきにくい性格をしていてそのオーラを醸し出しているから友達ができないんだと、母にもよく言われる。こっちは一生懸命愛想笑いをしているし、会話に入ろうとしているし、流行りに乗ろうともしている。
 でも、毎回、愛想笑いするタイミングを間違え、会話にも入れず、流行りにも乗り遅れ、結局は嫌われてしまう高校生活を送る。
 今年もそんな1年になりそうで絶望に近い感情になる。今年も独りか。なんだかとても憂鬱だ。

 「クラス、どう?溶け込めた?」
家に帰ると母がそう聞いてくる。友達ができないのは私のせいだと言ってくるくせに色々心配してくる。
「なわけ。全然溶け込めなかったよ。今年も友達無しかなぁ。あーあ、結局、愛華(あいか)だけだなぁ。」
 愛華は私の人生で最初で最後の友達だ。でも、高校が違うから最近は2ヶ月に1度ほどしか会っていない。1年生の時は毎日LINEしていたし、週1ペースで会っていたけれど2,3年生にもなると遊ぶ暇もなくなり、連絡をとる暇もなくなる。だから実質孤独の身だ。
「話しかけてみればいいのに。誰でもいいからさ、ご飯食べる時とか一緒に食べない?って。」
それが難しいから今こうなってるんだろうが!お母さんは全然理解してくれていない。話しかけて仲良くなれているならとっくにクラス全員に話しかけて全員と友達になっている。
 でも、話すタイミングを逃すから友達ができない。
「うーん、毎回、頑張ってるけどね。もう1回くらい頑張ろうかなぁ。明日、話しかけてみる。」