『新入生のみなさん、ご入学おめでとうございます』





―――4月…


新しい制服に、新しい生活。

目の前に広がる昨日までとは違う景色に期待に胸を膨らませる、そんな季節。



それは、ただ日々を流されるように生きている私にも例外なくやってきて、今日から通う高校の入学式に、今、まさに出席していた。


静かに、厳かに行われる式典は、長く忘れていた新鮮な気持ちを私たちに思い出させるように粛々と進行する。


(高校では、上手く、やれるかな……)


シン、と静まり返った空間では、周りにたくさんの人がいるのに、より強く孤独を感じて弱気に拍車がかかる。


全身に緊張を滲ませながらも前途洋々な表情を輝かせる同級生たちの姿は、反対に私の不安を酷く煽る。

そんな大勢が犇めき合う空間に一緒くたに詰め込まれる私は、さながらドールハウスの中で自分の意に反して踊らされている人形で。


息苦しくて、生き苦しい。


それは、錘を巻きつけて海に身を沈められるような、そんな底なしの苦しみだった。