「ホントは、このコンテストには違う写真を出そうかと思ってたんだ。」


「え!?そうなんですか?」


和輝の横顔を見つめながら、驚いて尋ねる。


「うん。でも、これにしてよかった。立花が気付かせてくれた。この写真の良さに。」


「いえいえ、そんな…。センパイの写真は、ホントに全部素敵ですし、他の写真でもきっと賞を取ってたと思いますよ。」


「ありがと」


そう言うと、和輝は「一緒にまわろ」と杏奈に声をかけて、ゆっくりと次の作品の方に歩みを進めた。

杏奈もそれに続き、和輝の少し後ろについて歩みを進める。


他の作品を眺めながら、和輝が話し始めた。


「実は最近、自分が撮る写真に納得いってなかったんだよね。」


「そうなんですか?どれも素敵だと思いますけど…」


「ありがと。褒めてもらえるの、すごく嬉しいんだけど
自分の中で納得できる写真はあんまりなかった。」


「納得できる写真…?」


「うん。最近は、色合いが派手だったり、オシャレな物を被写体にした、映える写真の方が、同世代にはウケがよくて。
あの写真も、俺は割と好きだったんだけど、実は部の中ではそんなに評価されてなかったんだ。」


「確かに、モノクロだし、映えるって感じではないですね。」


「そうそう、だから、部内でのウケがいい写真を撮るようになってから、自分は何が撮りたいのかわからなくなってきてさ。
カメラ始めた頃の感性がどっかいってた。」


「そう…だったんですね。」