部のメンバーでバーベキューと花火をしたあの日。


たくさんキスをした後、部員達がいるところに戻ると、甘々な空気感が溢れ出ていたのか、付き合ったことがすぐにバレた。

散々、部のメンバーにからかわれ、お祝いの言葉を浴びせられた後、
ようやく落ち着いて線香花火をすることができた。

和輝の助言通り、今度は持ち手の端を持って線香花火の先端に火を着ける。

『キレイ…』

パチパチと火花を散らす線香花火を、和輝と2人で眺める。

持ち手の根元を持った和輝の線香花火の火種は、早々に落ちてしまったが、
杏奈の線香花火はというと、火種がまだジリジリと音を立てて小さな火花を放っている。

『すご!』

杏奈の火種が落ちてしまった後、両手をパチパチとさせて喜んでいる杏奈を見て、和輝が嬉しそうに笑った。

『へぇ。持つ位置を意識しただけなのに、全然違うな。』

『ですね!知らなかったなぁ。』

『ちなみに、火薬のところを少し捻ると、強度が増して更に長く楽しめるらしいよ。』

『へぇー、すごい!長持ちさせるのも、色んなやり方があるんですね。』

『何事も、工夫が大事ってことだな。…俺たちも、工夫、していこうな。』

『え?』

すぐに理解できず、杏奈が軽く首を傾げながら尋ねると、和輝が真剣に、でも柔らかい表情でこう言った。

『遠距離になるから、いつも傍には居てあげられないし、杏奈が寂しくても、すぐに抱きしめることもできない。
だけど俺、いつも杏奈のことを1番に思ってるから。
離れてからも、それだけは絶対に、忘れないで。』

『…はい。私も、センパイのことを1番に思ってます。』

『…嬉し。俺、杏奈とはずっと、一緒にいたいって思ってるよ。だから…』


ポンポン、と杏奈の頭に手を乗せながら、和輝が言葉を続けた。


『工夫、していこ。長くこの関係を続けて、これからも付き合っていけるように。』