ぶわっと熱くなった顔を上げ、抗議しようとした瞬間

和輝の顔が近づき、そのまま、唇が重なった。


突然の出来事に、杏奈がフリーズしていると、唇が少しだけ、離れた。


至近距離で杏奈を見つめたまま、和輝が微笑む。


「…ごめんって。そんなに怒らないで。」


和輝はそう呟くと、また唇を重ねた。


柔らかい唇が触れ合い、

チュっという音と共に唇が離れる。


「杏奈、可愛い。」


フッと笑った和輝。

恥ずかしさと嬉しさ、多幸感で胸がいっぱいになる。

失恋して自分では癒せなかった心の傷は、跡形も無く消え去った。


その後も、見つめ合いながら、何度も唇を重ね合った。

キスの合間にも、静かに言葉を交わし合う。


「杏奈も俺のことさ、名前で呼んでよ。」

「名前…!?」


キスを繰り返しているからか、甘い表情になっている和輝に見つめられ、
恥ずかしいと思いながらも、杏奈は勇気を振り絞った。


「か…和輝…センパイ…?」

「センパイ、要らない。呼び捨てしてみてよ。ほら…言って。」


そう言うとまた唇を重ね、ゆっくりと離れた和輝。


「呼び捨てとか、無理ですって…」

「そ?じゃあ君付けでもいいけど?」

「そんな…急には無理です…」

「…残念。じゃあいつか呼んでもらえるのを、のんびり待つとするか…。」


そう言うと、また和輝は唇を重ねた。


「…和輝センパイ、キス好きなんですか…?」

「キスが好きと言うか…杏奈が好きだからキスしたくなるんだよ。」

「センパイって、意外と甘々ですね…?」

「え、嫌?」

「いえ、嬉しいんですけど、意外だなと思って…。」

「そうだな、俺も意外。好きな子と付き合うと、こんな気持ちになるのなんて、知らなかったよ。」


そう言うと、照れを誤魔化すように和輝が笑った。

その笑顔を見て、思わずキュンとする。


そしてまた、唇を重ね合った。


数日後には離れ離れになってしまう。

その距離感を、埋めようとするように。

何度も、何度も…。