「夏祭りに皆で行った時、立花に声をかけて被写体になってもらっただろ?」


「はい」


「ホントは、あの時に自分の気持ちにケリをつけようと思ってたんだ。立花と2人で過ごして、最後にいい思い出を作りたかった。」


「最後…?」


「そう。引越して地元離れるなら、告白なんかできる立場にないし、このまま諦めようって思ってた。
俺の気持ちも知らない立花を、俺と2人きりにさせるなんて勝手だな、って思いながらも、
俺としてはどうしても、立花と離れる前に、2人で過ごした思い出が欲しかったんだ。そしたら…」


落ち込んだ表情だった和輝が、口元を抑えながら、杏奈に目線を向けた。


自然と、見つめ合う形になる。


手で隠されたところ以外、和輝の顔は耳まで真っ赤に染まっていた。


「そしたら、立花に好きって言ってもらえて。
まさか両想いだったなんて思わなかったから、俺、本当に嬉しかった。」


顔を赤く染めた和輝の口から「両想い」なんて言葉が出てきて、しかも真っ直ぐ見つめられて。


反射的に、杏奈の顔も火照った。


「でも、せっかく両想いになっても遠距離になる。それが申し訳ないって気持ちが強くて、口を開いたら『ごめん』って言葉が勝手に出てきた。
走って帰る立花を追いかけたかったけど、追いかけたところで何て伝えればいいか分かんなくて、とりあえず気持ちの整理、つけようって思って。
で、整理ついたから、こうやって誘った。」


そこまで話すと、和輝は杏奈の方に向き直って、真剣な表情で言葉を続けた。