「初めて会ったあの日、写真を真剣に眺める立花を見つけた時に、小柄で可愛い子だなって思った。声掛けてこっちを向いてくれた時、なんだかキラキラして見えた。他の女子と違う、何かを感じたんだ。
しかも、話してみたらすごく穏やかな話し方で、でも表現力があって、すごく魅力的な子だなって感じた。一瞬で惚れたよ。一目惚れ、だったと思う。」


僅かに頬を赤く染めてそう話す和輝から真っ直ぐ視線を向けられ、恥ずかしくて少し目線をそらす。


そんな杏奈の反応に気付きながらも、和輝は話を続ける。


「入部してくれて、同じ部のメンバーとして過ごしてるうちに、俺、立花のことがますます好きになった。
立花を見かけるだけで嬉しくなるし、話せたら柄にもなくテンションが上がって。
これが、人を好きになるってことか、なんて思ってた。」


「そう…なんですね。てっきり私、センパイには恋愛対象として見てもらえないんだと思って…」


「そんなことないよ。俺としては、部長として上手く立ち回れるようになったら、告白しようと思ってたんだ。」


にっこりと笑った後、和輝は真面目な表情に戻り、話を続けた。


「でも、部長を引き受けてすぐ、病気がちだった母親の体調が急に悪くなって。
東京にいい病院があるからって紹介されて、受診して、そのまま母親は入院したんだ。
家族で話し合って、みんなで東京に行こうって、決めた。」


普段、あまり落ち込んだりしないイメージの和輝が、しんみりと自身の事情を話すのは、
聞いている杏奈の方まで、胸が痛むようだった。


「大変…だったんですね。」


「…うん。まぁな。」


弱々しく笑う和輝の表情が、ろうそくの揺らめきを受けてますます切なく見えた。