高校の入学式の日

部活の勧誘で外が賑やかに盛り上がっている頃



新入生の立花杏奈は、校舎の中を散策していた。



──結構広いなぁ。



明日から毎日通う学校。

ちょっと早めに見ておきたくなって散策してみたけど…



──あれ。こっちから来たっけ?それともこっち??



ぐるぐる回っているうちに、ある教室に辿り着いた。

いや、教室というより…



──すごい。展覧会?



教室の黒板と並行に、何本もの紐が教室の中を横断するように渡してあって、
そこにたくさんの写真がダブルクリップで留めてあった。



──誰もいないし、ちょっとくらい覗いていってもいいよね?



なんとなく、足音を立てちゃいけない気がして、
そろそろと歩みを進め、教室に入る。


全部で100枚くらいある写真たち。

1つ1つ、ゆっくりと眺めていく。



空の写真


花の写真


動物の写真


カップルの写真…


被写体が様々で、見ていて飽きない。



──色合いもすごい、素敵。こっちはビビットな感じで、こっちはセピアで…。



ふと、1枚の写真に目を奪われた。


吹き硝子をしている老人が1人

一目で、プロのガラス職人だとわかった。



──真剣な目つき。コップを作ろうとしてるのかな?今にも硝子が膨らんでいきそうな空気感が伝わってくるな…。