放課後、いつもより急ぎ足で教室を出て生徒玄関まで向かう。
慌ててローファーに履き替えていたせいで、私は気が付かなかった。
フワッと香る大好きなあの人の香りー・・・
勢いよく顔を上げると、その人は私のすぐ側に立っていて・・・一瞬息をするのを忘れる。
「ー・・・退けよ、邪魔」
美しすぎる顔面から発せられる、冷たい言葉を身体全身で受け止めて、幸せを噛み締める。
「何なんだよお前っ・・・マジでキモい」
ーーー・・・キモい
こんな言葉を人に言われたら普通傷つく。でも私の場合は蓮水さんの中で、少しでも私という存在を見てくれたような気がしてとても嬉しく思えてしまう。
私を心から軽蔑しているというような目で見下してから、避けるようにして学校を出ていってしまった蓮水さん。
……うぅ、今日もかっこいいぃい、、!!
蓮水さんの残り香を、肺がいっぱいになるくらい吸い込んでから、私も駅に急いで向かった。