【生徒会室】


もちろんここに足を踏み入れたことなどない。


目的の場所にたどり着いて直ぐに、慣れたように鍵を開ける蓮水さんは、黙って中に入ると振り返って私にも入ってこいと目配せする。




が、ここで私はとんでもない事を思い出した。



───カメラっ、教室に置いたままだ!




「あ、ああああのっ!蓮水さん・・・私、ちょっと準備があるので・・・す、少しだけ待っててもらってもいいですかっ?!」



生徒会室に足を踏み入れる前に、早口でそう言うと、蓮水さんは面倒くさそうに小さく頷くと・・・



「─…3分で戻れ。それ以上は待たない」



なんて、鬼畜発言が飛び出したので猛ダッシュで教室に向かい、ブラウスを二重に着ていることを友人に突っ込まれた気がしたが、答えることも無くカバンを引っ掴んで再び生徒会室に戻った。





一応生徒会室の前で乱れた髪を撫でるようにして整え、コンコンっと控えめにノックする。




─…ガチャっと、直ぐに開いた扉から、愛しくて堪らない蓮水さんの姿が現れ、一瞬立ちくらみがした。




「1分53秒って・・・早すぎて逆に引くわ。」



身につけているDIESELのお洒落な腕時計(リサーチ済み)をチラッと見て、ため息をつく蓮水さん。もう全ての行動を見逃したくなくて、瞬きという生理現象を一時的に止めたい。