「それではコーヒーも飲み終わりましたので私は片付けて参ります。エルウィン様は……」
「分かってる。仕事の続きをしていればいいのだろう?」
シュミットに声をかけられたエルウィンは腕組みしながら返事をする。
「大将、それでは俺も行きますね」
スティーブが立ち上がるとエルウィンが意外そうな目を向けた。
「何? もう行くのか?」
「え? ええ……何か?」
「何だ……折角カードゲームでもしようかと思っていたのに」
その言葉にシュミットが反応する。
「え……? 何ですって……?」
「う……」
エルウィンが狼狽える。
「たった今、申し上げましたよね? エルウィン様は……」
「分かった! 仕事をするっ! ほら! 片付けに行くならさっさと行け!」
エルウィンはシッシッとシュミットを手で追い払う仕草をする。
「はぁ〜……全く。では片付けて参ります」
「大将、お邪魔しました」
シュミットに続き、席をたったスティーブが頭を下げる。
「ああ、又な」
エルウィンが返事をすると2人は執務室を出てすぐに扉は閉ざされた。
部屋に1人きりになるとエルウィンはため息をついた。
「ふぅ〜仕方ない……仕事するか」
そして再び机に向かった――
「どう思う? シュミット」
執務室を出るとすぐにスティーブが声をかけてきた。
「何が?」
「大将の事に決まっているじゃないか」
「そうだな……。どうもすぐに仕事をサボりがちになるので困る。この城主になられて3年になるのだから、もう少し自覚を持って頂かないと。戦って国を守るだけが辺境伯の役割では無いという事を理解していただかないとな」
大真面目に答えるシュミットにスティーブは呆れた顔を見せた。
「はぁ〜? 何言ってるんだ、全く……? お前といい、大将といい……2人は妙な所で堅物と言うか、鈍感と言うか……」
「スティーブ。お前、一体何が言いたいんだ?」
「俺が言っているのは大将の変化についてだよ」
「変化……?」
「そうだ。始めてじゃないか? 大将が女性を気にかけるなんて」
「そうか……?」
「そうだよ。大将はあれだけの美丈夫だ。戦争勝利祝賀会に王宮に招かれれば女性たちが自ら言い寄って来るじゃないか? 尤も女性たちは相手が『戦場の暴君』と呼ばれている大将だとは知らずに声をかけてくるけどな?」
「まぁ、確かにな」
「けれど大将は全く相手にもせず、相手を睨みつけて『失せろ』と言うだけだからなぁ……」
「エルウィン様は着飾った女性たちが好きではないからな。香水の匂いも耐えられないと言っているし」
「そうそう。なのにアリアドネの事は随分気にかけているようだ。そうは思わないか?」
「やはりエルウィン様がハンドクリームを下働きの者たちと領民達に配ろうと思ったのは、アリアドネ様の事があってから……か?」
「そうに決まってるじゃないか。でも大将はアリアドネだとは気付いていないけどな。……これは、うかうかしていられないな」
「何がうかうかしていられないんだ?」
「つまり、のんびりしていたら大将にアリアドネを取られてしまうかもしれないって事だよ」
スティーブの言葉にシュミットはギョッとした。
「おい! 分かってるのか? アリアドネ様はエルウィン様の妻になるはずの方だったんだぞ?」
「分かってるって。でも大将はその事に全く気付いていないし、そもそもアリアドネを追い出したと思っているんだからな。というわけで俺は今から行ってくる」
「え? 行くって……一体どこへ?」
「アリアドネのいる仕事場に決まっているだろう? じゃあな」
スティーブはそれだけ言うと、廊下を走り去っていく。
「全く……スティーブにも困ったものだ……」
シュミットはため息をつくと、足早に厨房へと向かった。
そんな2人を物陰から見ている人物がいた。
それはランベールである。
「何……? エルウィンの妻になる予定だった女だと……? まさか、そんな相手が奴にいたとはな……」
そして不敵な笑みを浮かべた――
「分かってる。仕事の続きをしていればいいのだろう?」
シュミットに声をかけられたエルウィンは腕組みしながら返事をする。
「大将、それでは俺も行きますね」
スティーブが立ち上がるとエルウィンが意外そうな目を向けた。
「何? もう行くのか?」
「え? ええ……何か?」
「何だ……折角カードゲームでもしようかと思っていたのに」
その言葉にシュミットが反応する。
「え……? 何ですって……?」
「う……」
エルウィンが狼狽える。
「たった今、申し上げましたよね? エルウィン様は……」
「分かった! 仕事をするっ! ほら! 片付けに行くならさっさと行け!」
エルウィンはシッシッとシュミットを手で追い払う仕草をする。
「はぁ〜……全く。では片付けて参ります」
「大将、お邪魔しました」
シュミットに続き、席をたったスティーブが頭を下げる。
「ああ、又な」
エルウィンが返事をすると2人は執務室を出てすぐに扉は閉ざされた。
部屋に1人きりになるとエルウィンはため息をついた。
「ふぅ〜仕方ない……仕事するか」
そして再び机に向かった――
「どう思う? シュミット」
執務室を出るとすぐにスティーブが声をかけてきた。
「何が?」
「大将の事に決まっているじゃないか」
「そうだな……。どうもすぐに仕事をサボりがちになるので困る。この城主になられて3年になるのだから、もう少し自覚を持って頂かないと。戦って国を守るだけが辺境伯の役割では無いという事を理解していただかないとな」
大真面目に答えるシュミットにスティーブは呆れた顔を見せた。
「はぁ〜? 何言ってるんだ、全く……? お前といい、大将といい……2人は妙な所で堅物と言うか、鈍感と言うか……」
「スティーブ。お前、一体何が言いたいんだ?」
「俺が言っているのは大将の変化についてだよ」
「変化……?」
「そうだ。始めてじゃないか? 大将が女性を気にかけるなんて」
「そうか……?」
「そうだよ。大将はあれだけの美丈夫だ。戦争勝利祝賀会に王宮に招かれれば女性たちが自ら言い寄って来るじゃないか? 尤も女性たちは相手が『戦場の暴君』と呼ばれている大将だとは知らずに声をかけてくるけどな?」
「まぁ、確かにな」
「けれど大将は全く相手にもせず、相手を睨みつけて『失せろ』と言うだけだからなぁ……」
「エルウィン様は着飾った女性たちが好きではないからな。香水の匂いも耐えられないと言っているし」
「そうそう。なのにアリアドネの事は随分気にかけているようだ。そうは思わないか?」
「やはりエルウィン様がハンドクリームを下働きの者たちと領民達に配ろうと思ったのは、アリアドネ様の事があってから……か?」
「そうに決まってるじゃないか。でも大将はアリアドネだとは気付いていないけどな。……これは、うかうかしていられないな」
「何がうかうかしていられないんだ?」
「つまり、のんびりしていたら大将にアリアドネを取られてしまうかもしれないって事だよ」
スティーブの言葉にシュミットはギョッとした。
「おい! 分かってるのか? アリアドネ様はエルウィン様の妻になるはずの方だったんだぞ?」
「分かってるって。でも大将はその事に全く気付いていないし、そもそもアリアドネを追い出したと思っているんだからな。というわけで俺は今から行ってくる」
「え? 行くって……一体どこへ?」
「アリアドネのいる仕事場に決まっているだろう? じゃあな」
スティーブはそれだけ言うと、廊下を走り去っていく。
「全く……スティーブにも困ったものだ……」
シュミットはため息をつくと、足早に厨房へと向かった。
そんな2人を物陰から見ている人物がいた。
それはランベールである。
「何……? エルウィンの妻になる予定だった女だと……? まさか、そんな相手が奴にいたとはな……」
そして不敵な笑みを浮かべた――