オズワルドが去った後、エルウィン達は神妙な面持ちで話し合っていた。

「一体オズワルドは何を企んでいるのだ? お前たちはどう思う?」

エルウィンは腕組みをしながらシュミットとスティーブを順番に見た。

「さぁ……俺にはさっぱり分かりません。大体、オズワルドは元から何を考えているのか分からない人物ですからね。あの男の部隊は変わり者が多いし」

スティーブは肩をすくめた。

「そう言えば確かに……。オズワルド様の腹心とも言われている若い騎士がおりますが、彼もまたオズワルド様同様に得体のしれない人物ですからね……ですが、ミカエル様とウリエル様をこの南塔に移すのは良い考えだと思います」

シュミットは慎重に返事をした。

「それは俺も以前から考えていた。大体ミカエルとウリエルの居住空間でメイドや娼婦たちがいかがわしい行為をしているかと思うと吐き気がこみあげてくる。何とかしてやりたかったが叔父上がいたから、俺としては手を出しようも無かったしな」

エルウィンは吐き捨てるように言った。

「オズワルド様は本日中にもミカエル様とウリエル様をこちらに連れてこさせると話しておりましたね。お部屋の用意はいかがいたしましょうか?」

シュミットの質問にエルウィンは少し考えた。

「そうだな……。俺の自室の右隣り2部屋は確か空き部屋だったな。その2部屋をそれぞれミカエルとウリエルの自室として与えてやろう」

「なるほど。それは良い考えですね。それで大将。リアはどうするんです?」

スティーブがウキウキしながら尋ねてきた。

「リア? ああ……そうだったな。ミカエルとウリエルの専属メイドになったからにはあの宿舎に置いておくわけにはいかないか……」

「ええ。それだけではありません。この城は一部迷路のように複雑な造りをしている箇所があります。なのでなるべく部屋は離れた場所にしないように気を配るべきです」

シュミットはそこで一度咳払いした。

「これは私からの提案なのですが、どうでしょう? 私の自室の隣も空き部屋になっております。そこを彼女の部屋にするのはいかがでしょうか? そうすれば私が彼女の部屋に迎えに行ったり、送ることも出来ますから」

「は?」

エルウィンはシュミットからまさかそのよう言葉が口から出てくるとは思わず、間の抜けた声を出す。

するとスティーブが負けじと口を挟んできた。

「何言ってるんだ? シュミット! お前は大将の補佐官として忙しいじゃないか。リアの事なら俺にまかせろ。俺の自室も隣が空き部屋だからな。リアは俺の隣の部屋で暮らせばいい」

「スティーブ。お前の自室がある階は騎士達が暮らす居住空間だろう? その様な場所に彼女をすまわせるわけにはいかない」

シュミットの瞳が眼鏡の奥で怪しく光った。

「何だと? お前……何だかんだ言って、本当は自分がリアの面倒を見て親しくなろうと考えているんじゃないか?」

「何を言っている? そんなはずはないだろう?」

シュミットが珍しく反論する。

「フン。どうだかな? 俺の目はごまかされないからな?」

「何……?」

いつの間にかシュミットとスティーブはエルウィンの前だと言うのに険悪なムードになりつつあった。
そんな2人を半ば呆れた様子でエルウィンは見つめていたが、さらに殺伐とした雰囲気になりつつあり……ついに我慢の限界に達した。

「お前たち、いい加減にしろっ! こうなったらミカエルとウリエルは同じ部屋にする! そしてその隣の部屋をあの女の部屋にすることに決めた! 分かったかっ!?」

そしてエルウィンはシュミットとスティーブを睨みつけた。

「「は、はい……」」

エルウィンの決定事項に逆らえるはずもなく、2人は仕方なく返事をした――