12月23日。それは私がサンタさんからちょっと早めの最悪なプレゼントを貰った日。あの日は地面も空も全てが真っ白な吹雪だった。それなのに私の人生は真っ黒に染められていった。何も見えなかった。どれだけ明るい未来を想像しようとしても真っ暗闇だった。それが死にたくなるほど怖かった。


「雪菜(ゆきな)、久しぶり!夏休みどうだった?」
4月9日。夏休み明けの始業式の日だった。
 登校中、朝イチで話しかけてきた河口美和(かわぐちみわ)は、私の幼馴染であり、大の親友だ。
「久しぶり〜。なんかすごい開放感ありまくりだった。でも、部活とかクラスとか心配なこともめっちゃあるよね。」
「そうだよね。やっぱ中2になったしねー。」
私は今、中学2年生になったばかりだ。すごく楽しみだけど、不安もたくさんある。何より、美和と同じクラスになれるかが心配だ。
「あ、今日も一緒に帰ろーね。」
美和は小学校からの友達でご近所同士だから2人とも部活がない日や帰る時間が同じ日は一緒に下校していた。
 美和は私と違って陽キャなのにずっとこんな風に私と親友でいてくれるのはほぼ奇跡と言ってもおかしくない。
「あ、美和。雪菜ちゃんも。おはよう。」
学校へ行く途中、いつも合流するのは原田鈴(はらだりん)ちゃんだ。お互い、ちゃん付ではあるものの美和つながりで仲良くなった第二の親友だ。3人ともクラスは違うけど鈴ちゃんは美和と同じ陸上部で美和と仲がいい。去年も昼休みと休み時間はいつも一緒に過ごしていた。
「いや、この3人でクラス一緒がいいね。」
「ほんとそれ。先生、気利かせてくれよ。」
「でも、違うクラスだとしても楽しみだなあ。ね。」
そんな他愛もない中学生らしい会話をしながら登校しているとあっという間に学校に着いてしまう。
 学校に着いたら修了式の日に指示されていた通り、前のクラスのみんなで集合して、クラス発表を待つ。
「おはよう。」
「あ、おはよう、雪菜。久しぶり。」
挨拶を交わしてワクワクしながらクラス発表を待つ。同じクラスになれるといいなあ。そんな普通のことを考えられない日が来るなんてこの頃、1ミリも思いはしなかった。


 学校が始まって2週間。また普通の日常に戻った気がした。
 でも私は確実に身体の中に異変を感じていた。
 最近、部活で少し動いているだけでも息切れがするようになってきた。登下校中や体育の授業の時はしないのにちょっと活発な運動をすると息が切れてしまう。
 それにたまにだけど心臓が突然バクッと飛び出してしまうような驚きと痛さの間くらいのものを感じる。緊張している時のドキドキより少し強いドキドキを感じることがある。
 でも私はこの頃はまだあまり気にしてもいなかった。
5月23日。流石にやばいと感じた日だ。
 朝から少し体調が悪くて、息が荒くなってしまうことも少しあった。
 でも、ご飯も食べられたし、登校中にふらついたり、息切れしたりすることはなかったから、暑さかなとも思っていた。まさか、倒れるなんて思ってもいなくて、放っておいていた。
 体育の授業中、その日は外での体育でグラウンドに出ている途中だった。
 突然、脈拍が速くなったような気がして、その日はテストだったから緊張しているのかと思って最初は無視していた。
 でも、脈拍はどんどん速くなるばかりで次第に胸の辺りが痛くなってきた。息ができない。心臓が痛い。息が苦しくて視界がぼやけた。
 助けて欲しくて、でも声は出なくて。パニックになりかけながら私は座り込んだ。
「雪菜⁉︎ちょっと雪菜、大丈夫?」
近くにいた莎薇(さら)が駆け寄ってきて、私に声をかけた。声は出なかった。
 意識が遠のく中で莎薇が先生を呼ぶ声が聞こえた。