物置で監禁されていた私は宿屋の女主人と共に、盗賊たちのアジトに連れて来られた。

「へえ~ここがアジトですか。でもまさか宿屋の隣がアジトとは思いませんでしたよ」

私は窓から隣の宿屋を眺めた。

「おわああっ!? アマゾナッ!! お、お前……何て奴を連れてきたんだよっ!?」

入り口から現れた私を見て、真っ先に椅子から立ち上って叫んだのは前回私たちを襲った山賊のリーダーの男だった。ああ〜そうか、成程……。道理で聞き覚えのある声だと思った。

「何だ? あんた、この子を知っているのかい?」

アマゾナと呼ばれた宿屋の女主人が私に椅子を勧めながら、リーダーに尋ねた。

「し、知ってるも何も……俺たちはこいつに酷い目に遭わされたんだよっ!」

男は指先をブンブン振って私を指さしながら喚く。それにしても人の事を指さすなんて失礼な人だ。

「何言ってるんですか? 酷いのはそちらの方でしょう? いきなり私たちの馬車を襲ったのですから」

「何ッ!? あんた、この子の乗っていた馬車を襲ったって言うのかいっ!? 何て事をしてくれるんだよっ!!」

アマゾナはいきなり拳骨でリーダーの頭をなぐりつけた。その様子を見て私は思った。うん、きっとあの男はこの村のリーダーでは無いなと。

「この子はねえ……とっても可哀想な子なんだよっ!? あいつが……私たちが脅迫しているあの男がこの子の夫だって言うんだからっ! しかも新婚夫婦なんだっ! それなのに何だい? あの男、この子の身代金を要求したら『びた一文だって支払わんっ!』ってふざけたことを抜かすろくでもない男なんだよっ! 可哀想だとは思わないのかいっ!」

アマゾナは私をヒシと抱きしめながら男に喚く。う~ん……どうやら私はすっかり同情心から気に入られてしまったようだ。

「そ、そりゃ確かに馬車を襲った時、外に出るように言ったら男は馬車に乗ったままで、出てきたのはこの女だったけど……」

「ええ、そうですね。あなた方に外に出るように言われた時、彼はあなた方に攻撃されたら怖いので言う事を聞いて私だけ馬車から降りるように言いましたよ」

私は事実をありのままに述べた。

「何だって!? あんた、そんな事を言ってこの子を脅迫して馬車から無理やり下したのかい!? この馬鹿がっ!」

再びアマゾナは拳骨で男の頭を殴りつけた。

「ヒイッ! だ、だけど俺たちは盗賊だ! いつもこうやって馬車を脅していただろう!?」

「そうじゃないっ! 時には人を見て状況判断でやるかやらないか決めるんだよっ! この間抜けめっ!」

再びアマゾナは拳骨で男の頭を殴りつけた。うん、間違いない。恐らくこの村の統領はアマゾナだろう。

「まあいい。この子もあの男には相当、鬱憤が溜まっているらしいから、どうしても仕返しをしてやりたいらしいんだ。そうだろう?」

「ええ、そうですね。今迄ぞんざいな扱いばかりされてきたので、この辺でそろそろ一矢報いたいと考えております」

勿論、盗賊なんて阿漕な事をしているあなた方にもね……。

「わ、分かったよ……。この女と手を組めばいいんだろう?」

男は頭がズキズキ痛むのか右手で頭のてっぺんを押さえ、ビクついた眼で私を見ながら言う。う~ん……私を見てこんなにビクビクしているなんて。恐らく彼らは森の動物たちに相当酷い目に遭わされたのかもしれない。

「ええ、そうなんですよ。そこで私は良い考えが浮かびました。この方法ならうまくいきます。私は彼にリベンジする事が出来、あなた方は身代金をたっぷり取れる……どうでしょうか?」

そして私は2人を見ながらにっこりと笑みを浮かべた――