アレックス王子の部屋を出ると、なんと立ち去ったと思っていたメイド長が心配そうな顔で立ちすくんでいた。
「あら、メイド長さん。もうとっくに戻っていると思っていたけど？」
首を傾げると、メイド長さんは心配そうな顔で尋ねてきた。
「レベッカ様、先程お部屋の中でアレックス王子が何やら怒鳴りつける声を耳にしましたが大丈夫でしたか？」
まさか、それで心配して今まで残っていてくれたのだろうか？
「ありがとう、メイド長。私の事を心配してくれたのね？」
ニッコリ微笑むと、メイド長は少しだけ頬を赤く染めた。
「は、はい……レベッカ様が心配で……」
ポワッ
その時、私の心の中に温かい何かが生まれて、それがメイド長さんに流れ込んでいくのを感じた。ああ……私の力は今目の前にいるメイド長さんを認めたんだ。きっと彼女には素晴らしい幸運が舞い込んでくるだろう。そんなメイド長に私は声をかけた。
「あの……私、とってもお腹が空いてしまって。何か軽食を用意して貰えると助かるのだけど」
遠慮がちに言うと、メイド長は素早く答えた。
「はい、すぐに20分以内にご用意してお部屋にお届けします！ お荷物は全てレベッカ様のお部屋に運ぶようメイド達に申し付けてあります。ではご一緒にお部屋へ戻りましょう」
「ええ、そうね。戻りましょう」
そして私はメイド長に連れられてアレックス王子の部屋を立ち去った。歩きながら私は王子の部屋の方角を振り向き……ため息をついた。
＊＊＊＊
「な、何ですってっ！？ レベッカ様はまだ昼食を召し上がっておられなかったのですか！？」
ミラージュは私がまだ昼食を食べていない話を聞くと身をのけぞらせて驚いた。
あの後――
私が部屋に戻ると既に国から持ち込んだトランクケースが置かれていた。そして自分のワンピースに着がえると、すぐにミラージュが部屋のドアをノックしてきたのだ。ミラージュは着替えも終わっており、自室で用意されたランチも食べ終えていたらしい。
「ええ、そうなのよ。それで今メイド長が用意してくれているのだけど……それより聞いて頂戴。ミラージュ、どうやらアレックス王子は私が1人結婚式を挙げている最中、別の女性と情事の真っ最中だったみたいよ」
「は……？」
私の話を聞いたミラージュは固まった。
「あ、あの……レベッカ様……私の耳がおかしくなってしまったのでしょうか？ もう一度仰っていただけませんか？」
「ええ、だから私が1人結婚式を挙げている間、アレックス王子は別の女性とベッドの中で……キャアッ！ ミラージュッ！ 落ち着いてッ！ 頭の上に……！」
私はミラージュを見て驚いて悲鳴をあげた。彼女は怒りのあまり本性が現れ始めていたのだ。
「え？ あ……きゃああっ！」
私に指摘されたミラージュは頭の上に手を当てて悲鳴を上げた。
「お、お願い！ ミラージュッ！ 落ち着いて、ほら……深呼吸して、そんなに興奮ばかりしていたら、いつか皆の前で本性が現れて正体がばれて私達、この国を追い出されてしまうかもしれないわよ？」
「は、はい……す～は～す～は～……」
ミラージュは深呼吸をしている内に徐々に姿が元に戻り始めた。
「どう……？ 少しは落ち着いた？」
ソファに座り、お水を飲んでいるミラージュに尋ねた。
「は、はい……落ち着きました。しかし、どうもこの国はイラつかせる出来事や衝撃的な事件が多すぎます。このままじゃ身が持ちませんよ……」
ミラージュがため息をついたその時――
――コンコン
ドアをノックする音が聞こえた。
「あ、きっとメイド長さんだわ。はい、どうぞ～」
――ガチャリ
無言でドアが開けられ、そこには栗毛色の長い髪を垂らした何所か気だるげな眼差しをしたメイド服の女性が腕組みをして立っていた。そしてスタスタと部屋に入って来ると私の前でピタリと止まった。
「初めまして。アレックス様に言われて今日からレベッカ様の専属メイドになったビビアンと言います。これからよろしくお願いしますね？」
そして髪を片手で背中に払うと妖艶な笑みでじっと私を見つめてきた――
「あら、メイド長さん。もうとっくに戻っていると思っていたけど？」
首を傾げると、メイド長さんは心配そうな顔で尋ねてきた。
「レベッカ様、先程お部屋の中でアレックス王子が何やら怒鳴りつける声を耳にしましたが大丈夫でしたか？」
まさか、それで心配して今まで残っていてくれたのだろうか？
「ありがとう、メイド長。私の事を心配してくれたのね？」
ニッコリ微笑むと、メイド長は少しだけ頬を赤く染めた。
「は、はい……レベッカ様が心配で……」
ポワッ
その時、私の心の中に温かい何かが生まれて、それがメイド長さんに流れ込んでいくのを感じた。ああ……私の力は今目の前にいるメイド長さんを認めたんだ。きっと彼女には素晴らしい幸運が舞い込んでくるだろう。そんなメイド長に私は声をかけた。
「あの……私、とってもお腹が空いてしまって。何か軽食を用意して貰えると助かるのだけど」
遠慮がちに言うと、メイド長は素早く答えた。
「はい、すぐに20分以内にご用意してお部屋にお届けします！ お荷物は全てレベッカ様のお部屋に運ぶようメイド達に申し付けてあります。ではご一緒にお部屋へ戻りましょう」
「ええ、そうね。戻りましょう」
そして私はメイド長に連れられてアレックス王子の部屋を立ち去った。歩きながら私は王子の部屋の方角を振り向き……ため息をついた。
＊＊＊＊
「な、何ですってっ！？ レベッカ様はまだ昼食を召し上がっておられなかったのですか！？」
ミラージュは私がまだ昼食を食べていない話を聞くと身をのけぞらせて驚いた。
あの後――
私が部屋に戻ると既に国から持ち込んだトランクケースが置かれていた。そして自分のワンピースに着がえると、すぐにミラージュが部屋のドアをノックしてきたのだ。ミラージュは着替えも終わっており、自室で用意されたランチも食べ終えていたらしい。
「ええ、そうなのよ。それで今メイド長が用意してくれているのだけど……それより聞いて頂戴。ミラージュ、どうやらアレックス王子は私が1人結婚式を挙げている最中、別の女性と情事の真っ最中だったみたいよ」
「は……？」
私の話を聞いたミラージュは固まった。
「あ、あの……レベッカ様……私の耳がおかしくなってしまったのでしょうか？ もう一度仰っていただけませんか？」
「ええ、だから私が1人結婚式を挙げている間、アレックス王子は別の女性とベッドの中で……キャアッ！ ミラージュッ！ 落ち着いてッ！ 頭の上に……！」
私はミラージュを見て驚いて悲鳴をあげた。彼女は怒りのあまり本性が現れ始めていたのだ。
「え？ あ……きゃああっ！」
私に指摘されたミラージュは頭の上に手を当てて悲鳴を上げた。
「お、お願い！ ミラージュッ！ 落ち着いて、ほら……深呼吸して、そんなに興奮ばかりしていたら、いつか皆の前で本性が現れて正体がばれて私達、この国を追い出されてしまうかもしれないわよ？」
「は、はい……す～は～す～は～……」
ミラージュは深呼吸をしている内に徐々に姿が元に戻り始めた。
「どう……？ 少しは落ち着いた？」
ソファに座り、お水を飲んでいるミラージュに尋ねた。
「は、はい……落ち着きました。しかし、どうもこの国はイラつかせる出来事や衝撃的な事件が多すぎます。このままじゃ身が持ちませんよ……」
ミラージュがため息をついたその時――
――コンコン
ドアをノックする音が聞こえた。
「あ、きっとメイド長さんだわ。はい、どうぞ～」
――ガチャリ
無言でドアが開けられ、そこには栗毛色の長い髪を垂らした何所か気だるげな眼差しをしたメイド服の女性が腕組みをして立っていた。そしてスタスタと部屋に入って来ると私の前でピタリと止まった。
「初めまして。アレックス様に言われて今日からレベッカ様の専属メイドになったビビアンと言います。これからよろしくお願いしますね？」
そして髪を片手で背中に払うと妖艶な笑みでじっと私を見つめてきた――
