ひと晩じゅうエアコンをかけていた寝室は朝方にはひんやりしている。
 サイドチェストの時計は朝の五時。中途半端な時間に目が覚めてしまって、私はベッドの中で首をすくめた。
 といってもそれ以上は動けない。私の体は、嶺さんに深く抱えこまれているから。
 離婚話を取り下げてから、十日ほど。七月に入り、ひとたび外に出ると暴力的な暑さにさらされるようになった。
 あれから私は嶺さんと会社では社長と秘書を続けながら、ほぼ毎日のように抱かれている……けど。
 昨夜も、気絶するみたいに眠ってしまったし。
 思い出したら、かあっと全身が火照りだした。

 クールな顔をして、嶺さんがあんなに情熱的だなんて知らなかった。今だって、私を抱きしめる腕はゆるむことがない。月曜日なのに!
 このぬくもりは暴力的で、一度知ってしまうと離れるのがとても難しい。けれど、お互いに裸なのがひどく気恥ずかしい。
 せめて下着だけでも、と体を起こそうとした私は、逞しい腕によって元どおりベッドに引きずりこまれた。

「まだいいだろ、五時だ」
「嶺さん……っ、そうですけど一枚くらい着させて……」
「いいから」

 嶺さんが私の肌に指を這わせ始める。嶺さんに慣らされた肌はたちまち熱を持って、もっととねだるようにくすぶり始めた。

「待って、嶺さん。今日は平日です」
「時間はある。火をつけた君が悪い」
「そんな」

 と言いつつ、艶めいたため息が漏れた。嶺さんが私の上に覆い被さる。
 涼しげな目は、気づかないうちに男の目へと切り替わっていた。