一緒に楽しむだなんて、まるでふつうの夫婦かのよう。でも、どうして。
 それほど離婚を回避したいのかな。この結婚にはメリットがあるとも言ってたし。私の機嫌を取れば離婚を回避できると思ってる……とか?
 われながら、ひねくれた想像をしてしまって自己嫌悪に陥った。誘われた理由なんて、考えたってしかたないのに。

「日曜日にしよう。行きたいところを考えておいてくれ」

 週末が待ち遠しい。
 それだけは、たしかだから。
 その気持ちを守るみたいに胸にそっと手を当て、私は「はい」とうなずいた。




 日曜日。梅雨入り前だからか湿気をはらんではいたものの、綿をちぎったような雲が散らばる青空だった。
 緑豊かな公園は、ここが都心だとはにわかには信じられないほど広い。
 木々は濃い緑の葉を茂らせて生き生きとしており、マリーゴールドやパンジーといった花々が植えられた花壇は色鮮やかに目に映る。噴水前の広場ではちょっとしたパフォーマンスをやっているようで、人だかりができていた。
 花壇を縫うように作られた遊歩道は、ペットを連れた老人から幼児を連れた若い家族、それに大学生と思われるグループや恋人同士まで様々な人がそぞろ歩いていた。
 嶺さんと私もその中のひと組だ。

「公園は意外な選択だったな。この前みたいに、ショッピングがよかったんじゃないのか?」
「いえ、公園はのんびりできて気持ちいいですよ。夏本番になっちゃうと、外に出るだけで生気を奪われる気分になりますけど」
「たしかに風が気持ちいい」

 嶺さんが半袖Tシャツに包まれた腕を顔の前にかざして空を見あげる。
 暑いと言いながらも表情はまんざらでもなさそうで、リラックスしているふうだ。よかった。
 毎日忙しい嶺さんに少しでもゆっくりしてほしくて、公園をチョイスしたのだ。
 それにショッピングにしたら、またあれやこれやと買い与えられかねない。
 好きなものを好きなだけ買ってもらえることに女性らしい憧れがないわけではないけれど、形だけの妻の身で享受するのは抵抗がある。