マーブル模様が入った乳白色のマグカップは素朴な風合いをしていて、容量が大きいからたっぷりと飲めるのがいい。適度に持ち重りのするところも安定感がある。
 食器なんてそれこそ百均でも手に入るけれど、これは長く大切にしたい感じ。
 でも今のままでも困ることはないし、などと悩んでいるといつのまにか嶺さんが隣に来ていた。

「一品ものか。どれも微妙に柄の出方が違って味わいがある。いいな」
「ですよね。まったくおなじじゃなくて、絶妙に不揃いになるのがかわいいです。個性があって」

 私が気に入ったものを嶺さんも気に入ったと思うと、声が弾む。流れでどの柄が好きかと訊かれたので、私は真剣に吟味してひとつ選んだ。

「わかった。なら俺はこれにしよう」

 嶺さんはおなじ一品ものからもうひとつマグカップを選ぶと、私が選んだものと合わせて買い物カゴに入れてしまった。
 しかも私が止めるまもなく、おなじシリーズのお皿もカゴに入れる。
 お皿も揃えたらかわいいとはたしかに思ったけれど……!
 その後も嶺さんは私がいいなと口にしたものを、値札も見ずに片っ端からカゴに入れていった。お店の商品をすべて買い占めかねない勢い。

「ほかにはないか?」
「ないです、まったく!」

 出費を思って内心ヒヤヒヤしたけれど、嶺さんは当然かのようにお会計を終えてしまった。
 荷物はすべてその日のうちに配送されるそうで、お店を出る。

「こちらから店舗に足を運ぶのは久しぶりだ。いい気晴らしになったな」
「いつもはどうやって買い物を?」
「あちらからサンプルを見せに来るんだ。それを元に買う。楽ではあるが味気ない」

 嶺さんは言葉のとおり楽しそうで、私もようやく楽しさがこみあげてきた。買い物中は純粋に楽しむというよりは、金額にヒヤヒヤする気持ちのほうが大きかったのだ。

「誰かとお買い物にいくのはずいぶん久しぶりで、ドキドキしましたけど……嬉しかったです。ありがとうございます」
「ほかにほしいものは?」

 え、と顔を上げると真剣な様子の嶺さんと目が合った。