お洒落な丸メガネをかけた彼は、
長い髪が眼鏡にかかりそうになるのを、
すこし気だるげに細くしなやかな指で
はらっていた。

「そろそろエプロンに着替えて、
手を洗ってきてね〜」
という先生の声。

すると、彼はその長い髪をピンで留め、
美しいその手を念入りに洗い、
真っ白なハンカチを取り出して手を拭いた。
その一連の動作が
あまりにも洗練されていたので、
私、松下文乃は思わず見とれてしまう。