「……はなびが俺を許せないのはちゃんと分かってる。だからこそ、ちゃんと謝りたくて」


 弱弱しく、それでいてどこかまっすぐな瞳と目が合った。


「っ、知ったような口利かないで。ちゃんとちゃんとって、……ほんと何様?」


 薫は驚いたように目を見開いた。

 まさか、わたしがこんなにも反発する女だとは思わなかったのだろう。


「はな、び」


 わたしを呼ぶ声が震えている。


「ごめん、本当にごめん。俺、何も言わずにいなくなっちゃって……」


 薫はぶつぶつと何かを呟いている。


 わたしの鬱憤は収まるどころか爆発寸前にまで迫っている。


 五年前のこの日、薫は何も言わずにどこかに消えてしまった。
 だけど、わたしが怒っているのはそんなことではなくて……。

 姿を消した後、何の連絡も寄越さなかったことに怒っているんだ。


「……わたし、何度も何度も薫に連絡した。電話だって何回もかけた。だけど、薫は出なかった。あんたのこと、本当に心配してたのに。……っ、大好き、だったのに」


 また涙が溢れ出す。呼吸が上手くできなくて、凄く苦しい。


 こんな情けない姿を薫になんか見せたくなくて、勢いよく薫の手を振り放した。