「……はなびが俺を許せないのはちゃんと分かってる。だからこそ、ちゃんと謝りたくて」
話を聞いてもらえる自信なんてどこにもなくて、だけど気持ちだけは強く持ち、はなびの目を射抜いた。
「っ、知ったような口利かないで。ちゃんとちゃんとって、……ほんと何様?」
「はな、び」
はなびを呼ぶ声が震える。
頭は真っ白で、何も考えられなくなっていた。
「ごめん、本当にごめん。俺、何も言わずにいなくなっちゃって……」
「……わたし、何度も何度も薫に連絡した。電話だって何回もかけた。だけど、薫は出なかった。あんたのこと、本当に心配してたのに。……っ、大好き、だったのに」
はなびの悲痛な声がすぐ耳元でして、苦しいほどにその気持ちが伝わってきた。
罪悪感で心が苛まれる。
はなびが俺の手を勢いよく振り放した。
俺の手はあっけなく彼女の手首から離れ、力なく垂れ下がる。
その手をぼんやりと見つめていると、さらに俺の心を締め付ける鋭い言葉が投げられた。
「もう帰って」
「……それ、本気で言ってる?」
「うん、本気だよ」
俺はしばらくその場に立ち尽くしていた。
だけどすぐに思い至って、寝室から出る。
すると、俺のペットボトルに口をつけるはなびの姿が視界の端に映った。