彼女に会える保証なんてない。

 もう何年も連絡を取っていないから、もしかしたらもう引っ越しているかもしれない。


 それでもここまでやって来たのには理由がある。


 少し離れた所から、ドーンドーンと花火が上がる音が聞こえてくる。


 希望は薄かったけれど、もしかしたらそこに彼女がいるかもしれないと思い、花火大会に向かった。


 屋台がちらほらと見えてくる。

 花火大会の会場に近づくにつれ、過去の傷がえぐられるみたいだ。


 ……五年前の今日。俺は何も言わずに恋人の前から姿を消したのだ。
 一緒に花火観に行こうねと約束していたのに。


 彼女とは中三の冬に付き合って、高二で自然消滅して別れた。


 それから五年が経つのだから、彼女は俺の記憶の中よりも大人びた女性になっているだろう。

 そんなことを思っていると、前からふらふらと足元が危なっかしい女性が歩いてきた。


 目を凝らしてよく見てみると、すぐに彼女だと分かった。


 心臓がドクドクと早まる。五年ぶりの再会に、俺の心臓は情けないくらい早鐘を打っていた。

 だけど、彼女の前だけは格好いい自分でいたかったから、余裕のある風を出した。


「ただいま、はなび」