若槻が懐かしいと言う駄菓子屋に行ってみたりして,私達は放課後の時間を潰した。



「そう言えば,門限何時? 女子だから,あんまり遅いと何か言われるんじゃない?」



それは,夕飯の誘いだった。

ついでにどっか寄ろうという。



「お母さんなら,帰ってこないよ」



ほんのたまに,睡眠をとりに帰るだけ。

お母さんの家なのに,住んでいるのは私みたい。

今はどこで遊んでるんだろう。

まだ仕事かな。  



「お父さんは,とっくに離婚してる」



だから。



「ラーメン,食べたいかも」

「しょうゆ?」



若槻が気を使うように笑った。



「豚骨の方がすき」

「そっちのが近いし,行くか。今からだと丁度良い。」



私も素直に答えて,若槻はそう言ってくれる。

よし行こうと行き先を決めて,再び歩き出したとき。

私の電話がなった。



「あ……ごめん若槻,私帰る」

「え? ……出なくていいの,電話」

「うん,大丈夫。多分彼だから」



私の電話番号を知っているのは,お母さんと彼と学校だけ。

お母さんは未だ1度もかけてきたことがない。

人前で出るわけにはいかないから,私はメッセージをいれる。



『今日は家?』



既読がついて,返ってこないから。

家で良いんだな。

私はスマホを鞄にしまった。



「電番…LINEでもいいけど,教えてよ」

「え?」

「友達,でしょ?」

「…いいけど,LINEはやってない」

「え?」



若槻って,驚いてばかり。

私ってそんなに変?
 
口頭で電話番号を伝えて,若槻の電話番号を自分のスマホに登録する。

3人だけの寂しい一覧が,いつもより少し多くみえた。



「じゃあ,ありがとう」

「うん,またね」



またね,どこか遠い響き。

本当に今日だけで良かったんだから。

次,なんてないよ。

若槻。