それは突然の知らせだった。次の日私は廉君の所に行くのが何となく出来なくて真っ直ぐ家に帰っていた。そしたらスマホが鳴って出てみたら蒼太君だった。やけに焦っていて、ただ事ではない雰囲気が伝わってくる。もしかして廉君に何かあったんじゃないかと思わずスマホを握り締める。

「加奈子!廉が……」
「どうしたの!?廉君に何か……」
「俺のせいや。俺のせいで……」
「蒼太君、とにかく落ち着いて。ゆっくり話して。ちゃんと聞いてるから。」
 自分も気が急いていたが蒼太君を落ち着かせる事が先決だ。私は優しい声で促した。

「廉が急変した。」
「えっ!?」
「本当はここ最近、具合が良くなかったらしい。でも俺の為に昨日無理して……今は眠ってるけどいつどうなるか、わからへんって先生が……」
「そんな……」
 ガクッと膝が落ちる。私は自分の部屋の真ん中で呆然と宙を仰いだ。

 廉君がいなくなる?つい最近自分の中にある大切な気持ちを自覚したばかりだというのに?こんなのあんまりだ。神様は何であんなに良い人を連れて行こうとするのだろう。……あぁ、良い人だから連れて行くのか。そんな事を考える。

「それと、廉から伝言があんねん。」
「伝言?私に?」
「『俺の事、考えるって言ってくれてありがとう』ってさ。それと『ごめん』って。」
「何それ。『ごめん』なんて、私のセリフだよ……」
 もう限界だった。スマホを投げ出して両手で顔を覆う。とめどなく涙が溢れて止まらない。廉君との今までの思い出が走馬灯のように蘇る。二年生の時の仲が良かった時の事。三年になって勝手にライバルだと思って敵対視していた時の事。病気になった廉君の姿。私を好きだと言ってくれた時の少し照れた顔。お見舞いに行った時に見せてくれた満面の笑顔。蒼太君と話している時の悪戯っぽい顔。

 もっと色んな顔が見たかった。もっと色んな話がしたかった。私の事も知って欲しかった。何でもっと早く、廉君の存在に気付けなかったのだろう。ホント、馬鹿だ。私は。

「ここ2、3日が山やって。」
 蒼太君の言葉は頭の上を掠めていった。

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