「加奈子!あんたどういうつもりなの?あたし達の事友達だって言ったじゃない!!」
「何が友達よ。あんた達が私の悪口言ってんの、知ってるのよ!」
「そ、そんなの嘘よ!友達の悪口言う訳ないじゃない。バカにしてんの!?」
「バカになんてしてないわ。本当の事言ったまでよ。」
「……ならあたし達も言ってやるわ。あんたのそういう上から目線がずっと前から気に入らなかったのよ。自分が中心じゃないと気が済まないし、男には媚びるし。蒼太君の事だってうちらに内緒でコクるなんて一体どういうつもり?」
「なっ……!そんな事あんた達に関係ないでしょ!!」

 次の日、学校に着いて早々取り巻きの一人の美咲に言いがかりをつけられた。最初は普通の会話だったのがどんどんヒートアップしていって、誰も止められない状態になってしまった。他の女子や男子までもが遠巻きに私達を見ている。

「ちょいちょい二人共。そこら辺で終いにせぇや。授業も始まるし。」
 そこに蒼太君が入ってくる。私は頭に血が上ったまま、キッと睨みつけた。
「蒼太君!何で止めるのよ!」
「邪魔よ!あっち行って!」
 すると美咲も手で追い払う仕草をする。それでも蒼太君は引かなかった。

「ど、どうどう……加奈子も美咲も落ち着いて。ちゃんと話せばわかっ……」
「落ち着いてなんかいられますかってんだ!あたしは友達なのに裏切られたんだぞ、この加奈子に!」
「友達だって思ってたんやったら、何で悪口なんか言ったん?」
「え、それは……」
 蒼太君の真面目な声色に美咲の勢いが萎む。その隙をついて蒼太君は続けた。

「そんなのは友達って言わんのや。」
「友達だって悪い所が見えてくれば悪口も言いたくなるでしょ。それのどこがいけないの?」
「悪い所を本人に直接言えてからこそ、本物の友情なんや。いつも深いところで繋がっとって離れていてもお互いを信頼し合える。それが友達なんやと違う?」
「…………」
「美咲。あたし達もこれからそういう友達になろうよ。」
「え……?」
 さっきとは打って変わって静かに言うと、美咲が小さな声を出す。私がこういう事を言うとは思わなかったのだろう。呆気に取られた顔をしている。他の子達もびっくりしている様子だ。

「ごめんね、みんな。あたしってこういう性格だから、上から目線だったり偉そうにしていないと人と話したり出来なくて……ほら、ガキ大将っているじゃん?あれの女版って感じ。自分が中心にいれば、一人ぼっちにはならないから。だからみんなには今まで凄く嫌な思いさせてたね。謝ったって簡単に許される事だとは思わないけど、……ごめんなさい。」
 そう言って頭を下げる。それに対して女子達はざわざわと騒ぎ出したけど、美咲だけは何も言わなかった。沈黙が恐くてまた口を開く。

「でももし許してくれるのなら、うわべだけの関係じゃなくて本当の友達になりたい。」
「加奈子……こっちこそごめんね。」
「え!?」
「あたし達の方こそ謝らないと。だいぶ酷い事言ったけど、本心とかじゃないから。ただ……加奈子に嫉妬してたのかも。美人で勉強も出来て先生達からも信頼されてて。本当は皆の憧れの的なんだよ、加奈子は。こちらこそ今までの事許してくれるなら、これからもよろしくお願いします。」
「……もちろん!!」
 私達が固い握手を交わすと他の女子達がわ―っと集まってくる。ぎゅうぎゅうになりながらも私は笑った。本心を打ち明け合ってスッキリした気持ちで、近くにいて事の次第を見ていた蒼太君を見る。すると蒼太君が何か呟いた。

「ん?」
「いや、何でもない。ただ廉の心配事が一つ減ったってだけや。」
「?」
 良くわからなかったが取り敢えず今はこのおしくらまんじゅうから抜け出さないと。
 私は美咲達を宥めながらやっとの事で抜け出した。

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