「蒼ちゃ~ん!」
「うわっ!?何や、廉。いきなり抱きつくなや!」
「ええやん。俺と蒼ちゃんの仲やろ?」
「どういう仲やねん……」
「俺は蒼ちゃんを愛してんねんで?」
「正直言うとな……俺もお前が好きなんや。」
「え゙!?」
「……冗談に決まってるやろ。何、本気にしとんねん。」
「何や、ビックリしたわ~……」
 廉君がへなへなと座り込む。蒼太君は口端を上げて悪戯っ子のような顔で笑った。それを見た私の胸はキュンと高鳴る。そして隣でまだへたり込んでいる廉君を恨めしげに睨んだ。

(もうっ!いっつも廉君ばっかり……私だって蒼太君と話したいのに。)

 私は取り巻きの女の子達に気づかれないように溜め息を吐いた。

 私は長崎加奈子。中学三年生。自分で言うのもなんだがクラスの女子の中心的な存在で、学級委員長も務める優等生。いつもクラスの取り巻きの女の子達を侍らせている。でも本当は家で死ぬほど勉強して学年トップを維持しているし、先生達の印象を良くする為に率先して手伝いを買って出たりして努力しているのだ。
 私は目の前で私のご機嫌を取ろうと必死になっている友達の事を見ながら苦笑する。もしこの子達にそっぽを向かれたら何も持ってないし特別なんかじゃない私は、一気にこのクラスで浮いた存在になってしまうだろう。そうなったら多分生きていけない。不登校になって高校にも行けなくなって、お先真っ暗だ。そんな未来をうっかり想像して体を震わせた。
 その時、教壇の方で大声が上がって私は思わず振り返った。

「蒼ちゃん!」
「あっはっは!!」
 廉君が真っ赤な顔で叫ぶのを見て、蒼太君がさも可笑しそうにお腹を抱えて笑っている。そんな仲良い二人にまた溜め息を吐いた。

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