「あんたは挨拶、しないの?」


「ふっ。わたしたちはそんなことしなくても通じあってるんでね」


「へー。ずいぶん余裕そうじゃん」



そうは言っていますが……。

実際のところドキドキドキドキと、今にも心臓が口とは言わず身体中の穴という穴から飛び出してきそうだ。


小さなわたしたち、体内で熱いハートに冷水をかけて頑張ってくれている。



「───皆木」


「はうわっ!!」



うそっ、呼ばれた……!?
いま呼ばれたよね?わたしのお名前!

朝だというのに声も格好いいだなんて困っちゃうよもう。



「…なんだその返事」



と、さっきまで生徒たちに囲まれていたイケメン教師“イッチー”こと一浦 遥人(いちうら はると)くんがわたしのところへやって来る。


(※わたしはせめてここでくらい君呼びをしたいようだ)