「わ、皆木先輩のトロンボーン、新しくていいな~。ケースもすっごい綺麗ですね!」


「そ、そう?買ったばかりだからかな…」


「メーカーはどこですか?私のは中学から使ってるんですけど、けっこうメンテしてて。
スライドの滑りだったりマウスピースの型だったり、やっと育ってきたかなってとこです」


「あ…、わたしは初心者セットで買って…」


「ええ、それぜったい良くないですよ。ちゃんと楽器屋の店員さんと相談して自分に合うものを決めないと、後々になってお金かかりますから」



やばい……、これだ。
わたしが来ていい世界ではなかった感…。

専門的な知識は一切のわたしにとって、なんとか苦笑いと笑顔で乗り切るしかない苦痛な時間だ。


どうして「やりたい」や「好き」という気持ちだけで動くことができないのかな……。


そんなわたしに声をかけてきた後輩ちゃんだって同じトロンボーン担当ではあるが、わたしよりもずっとずっと上手だった。