わたしの家は母子家庭で、父親はわたしが物心つく前に病気で他界している。
女手ひとつで育ててくれて、私立高校にまで通わせてくれて、部活もさせてくれて。
本当にお母さんには感謝してもしきれない。
「ねえ、あのひと誰?」
「ちょっと!だれって、2年の皆木先輩じゃん」
「あーー…、あの初心者っていう?」
集められた放課後の第3音楽室。
今日から数日間、わたしも一応は練習に呼ばれていた。
しかし後輩からの心ない言葉、思っていた以上にグサグサと胸に突き刺さってくる。
「えっと、3年生を送る会の練習をするって……」
「……あっ、そっか、皆木さんもだ。ねえ坂田ちゃーん、皆木さんどうするー?」
「皆木さんはまずは全体の様子を見てて。たとえば1部のパートだけ吹くとか、そういうふうにするかもだから」
「…はい」
はい、って。
わたしだって同じ2年生なのに変なの。