「皆木さんは初心者だからイメージしにくいかもしれないけど、強豪校で初心者って……正直いってありえないことだから」
「そ、そうだよね。だからわたしもっ、」
「おなじクラスメイトとして、私たちも先生や先輩に迷惑かけたくないの。後輩にもナメられたくないし」
80人以上の部員が在籍している、鈴高の吹奏楽部。
このクラスにももちろんいて、坂田さんのうしろに4人が見えた。
一応はわたしを入れて5人なのだけど、彼女たちはわたしを認めてはいないんだろう。
「厳しいと思う。1度もコンクールメンバーに選ばれないで終わるだろうけど、それでいいの?」
視線が落ちる。
ここで唯ちゃんがいたなら鋭く言ってくれたんだろうけど、すでに彼女は部活に行ってしまっている。
つべこべ言わずさっさと退部しろって言われたみたい……。
8万円くらいするトロンボーン、せっかく買ってもらったのに。
せっかく名前もつけて、頑張ろうって思ってたのに。