「トロンボーンって、応援にも使える楽器だったっけ」


「へ?応援?」



急にどうしたの先生。

名前をハルトにしてデロンデロンなニヤケ顔を披露するわたしとは反対に、どこか真剣だ。



「はい。たしかブラスバンドにも入ってたと思いますよ」


「…ならいいわ」



代わりに答えてくれたのは唯ちゃん。

別名、彼女は中学生のときから「皆木 にいなの保護者」だった。


理解できないわたしを置いてきぼりに、スタスタと職員室へ向かっていった若き24歳の英語科。


すると唯ちゃんことお友達。
こんなことをポツリと言ってくる。



「たぶんお互いに分かってないだろうけど、イッチー結構すごいこと言ってたよ」


「へっ?どこが?なんの部分が…?」


「その鈍感さで法律にも勝てたらいーのにね」


「んん?あっ、待ってよお友達!!」



わたしが通うこの鈴ヶ谷(すずがや)高等学校───略して“鈴高(すずこう)”は私立の進学校であると同時、部活動にも力を入れている名門校だ。