「先生っ、そういえば名前決めたの!」


「名前?…ああ、楽器のか」


「うん!ハルト!!」


「だろーな」



「だろーね」と、隣から唯ちゃんの似たような即答も重なった。


楽器に名前を付けることは愛着も湧いて上達に繋がるし、その楽器を大切にしようという心も生まれて大切なことだという。


去年までは基礎中の基礎を学んでいたわたしにとって、やっと今年から持つことができた自分の楽器。

今もケースに入った金管楽器が我が子のようにいとおしい。



「この子ね、トロンボーンだよ先生」


「…トランペットだと思ってた」


「ええっ、ちがうちがう!ずっとトロンボーンがやりたかったの!」



マウスピース姿しか見ていない先生がそう思うのも無理はない。

金管楽器でも人気どころとして、サックスやフルートに続くものはトランペットだ。


でもわたしは中学生の頃から、スライド菅を動かして演奏するトロンボーンにずっと憧れていた。