気が付いたら1日が終わってるいることが良くある

今日もそんな日で私の記憶の片隅にも置かれないような1日なんだ、きっと

そんな日は即座に屋敷に帰ってある所に向かう

校門を出て待機している車に急いで乗り込む

「お嬢様、今日は帰ってくるのが早いですね」

この人は私が幼い頃から仕えてくれている凛さんだ

「えぇ、早く帰ってテスト勉強をしたいの」

「まぁ、それはいい事ですね」

なのに、この人は一切私の嘘が見抜けた試しがない

天然なのか、ただの馬鹿なのか、、

「着きました」

「ありがとう」

凛さんにお礼を言い部屋にダッシュで向かう

ベットに荷物を投げつけ邪魔くさい髪の毛を1つに束ねてお気に入りの帽子を被り黒いパーカーを羽織って衣装室に入る

キラキラ、チャラチャラした服たちの間を通って奥の服を掻き分けると1つのちいさな扉が出てくる

扉を開けてギターを取り出す

それを背負いもう一度深く帽子を被る

「よし、行くか」

屋敷から徒歩30分くらい。

名前は「星闇suta-burakku」

名前も中二病ぽいっし建物も怪しさ満点だけど

中はみんな優しい人ばっかだし何よりここに居るかもしれない

水篠 凪(ミズシノナギ)が居るかもしれない

中に入ると心地良いリズムが流れている

「あっ、嬢ちゃんまた来てくれたんだね」

入口に受付をしているお姉さんに声を掛けられる

「こんちには。また来ちゃいました」

「ありがと〜店長喜ぶよ〜」

目を細めて心底嬉しそうににひっと笑う

少し外見は奇抜だけど中身は素直なとても良い人な事が伝わってくる

「そうだ、ドリンク何にする?」

「えっと、じゃありんごジュースで」

メニュー表に紅茶やコーヒーが無いことに安心する

「はいはーい、どうぞ〜星闇のロック堪能してって」

ドリンクを片手にステージの見える端の方へと移動していく

こんな所に朝比奈家の者が居るなんて知られたらただじゃ済まされない

私は人探しもしているが本当にロックが好きなんだ

ピアノなんて物足りない

もっと、白熱する環境下の中で何もかも忘れて音を出したい

うちでは洋楽以外受け付けない家だから一生こんなこと出来ないんだろうけど

次のバントの演奏が始まる

出会ったのは小学生1年生

それまで私は洋楽以外音楽の種類がないかと思ってた頃

ピアノだって嫌いじゃなかった

鍵盤を弾くことの楽しさだってあった

そんな日私の屋敷にある人が来た

それが、水篠凪だ

今でも鮮明に覚えている

凪兄との日々は

「どうも、こんにちは。水篠凪です。これから瑠夏お嬢様のピアノのレッスンをさせて頂きます」

第一印象はどう見てもこの世界の道をはみ出して歩んでなさそうな人に見えた

「どうも。これからよろしくお願いします」

あ、あと、金髪がよく似合っている人だった

「奥様よろしくお願いします。瑠夏ちゃんお部屋の案内頼んでいいかな?」

「分かった」

「あっ、そうでした。1つ注意事項を。奥様このレッスン後瑠夏お嬢様に復習をさせないで下さい」

子供の自分でも耳を疑うような言葉を凪兄は言っていた

「え、え?復習をさせない、、?そしたらこの子に身につかないじゃない」

母が少し怒っている状況に私は怯えているしかなかった

「いえ、復習をさせるな。ではなく、復習をさせようとしないで下さい。」

ただ、私は水篠凪の顔と母の顔を見上げることしか出来なかった

「もし、この子に悪影響を及ぼしたらどう責任をとってくれる訳?」

「あぁ、それはこちらのお嬢様が悪いので。その場合。」

しれっといいのける

「、、、!!」

まだ会って数分の人に何を言っているのか理解が出来なかった

「うちの子に何を言っているの!!もういい!帰ってちょうだい!」

ここまで人を怒らせる。ましてや、名の通った人に堂々と喧嘩を売っている人は初めて見た

私の周りの大人は、少しでも良く思われようと媚び売ってビクビクしている大人しか見た事なかった私には新鮮な状況だった

「貴方は、自分の子の頑張りを信用出来ないんですか?何でもかんでも親がやって子供何一つ身につかないですよ」

キョトンとした顔で言う

「、、、成果が出なかったら即解雇ですので」

渋々受け入れてくれてほっとする

「もちろんです!」

次の印象は他の大人とは少し違う人だと感じた

怒っている母を置いて部屋に案内する

「、、、ここが、私の部屋、です」

ピアノの椅子に静かに座る

「敬語はいいよ〜。俺も疲れる」

ぐだっとピアノの上にもたれ掛かる

「、、、わかった」

「あっ!あとさ、凪兄って呼んでよ」

「、、、わかった」

人見知りの私は凪兄の言う事に全て従った

「じゃあ!ピアノ1回弾いてくれない?」

「わかった」

ピアノの蓋を開けて緊張しながらも今まで習った全てのことを詰め込み弾いた

「わあっ!すごいね!到底小さな子供が弾いたと思えないよ!」

目を輝かせて私の演奏を褒めちぎったのを覚えている

「そんなこと、ない、」

今までこんなに褒めらたことはなかったから少し困惑した

ここまで、褒めてくる人は何かしら自分に利点があった人だけだったから

「ん〜、、でも、そうだなぁ。もうちょいここ自由に弾いてみたら?」

楽譜の音符に印をつけられる

でも、ここって

「、、、でも、そうすると、、音の、まとまりが良くなくなるから、、」

たどたどしい言い方で凪兄に伝えようとする

「そう!正解!」

「??」

凪兄の言ってる意味が分からなくなる

「さっきからずっと言う事従ってたから、もしかしたらそのまま従うのかと思ってさ」

「ごめんなさい」

凪兄に悪いことをしてしまった、もう少し自分の意見を言わないと

「なんで謝るの???」

さっきの私の顔みたいになる

「え、えと、、その、自分の意見いえなかったから、、」

手元を見ながらもごもご言う

「えー全然いいじゃん。俺なんて脳みそで考えたこと全部言っちゃうからさー」

「、、そうなの?」

「そーだよー。でも自分が損しそうなことは言った方がいいよ。後悔するのは自分だけじゃないから」

ニコニコしていた顔が少し変わる

「自分だけじゃないの?みんなにも後悔させちゃうの、、?」

「まぁ!それはもうちょっと瑠夏ちゃんが大人になったら分かるよ。練習始めるよー」

今でも、私は凪兄の言っていた事が分からない

凪兄がどんな感情で、どんな人生を送って、、その言葉を言ったのか私は分からない

私は、何一つ凪兄の事を知らない

「以上っ!!聞いてくれてサンキュー!!!」

明るいライトで現実に引き寄せられる

「あっ、やば時間」

りんごジュースを一気に飲みお姉さんにお礼を言う

「お姉さんまた来ます」

ペコッとお辞儀をする

「はーいまた来てねー」

ダッシュでスタジオを飛び出して屋敷へ向かう

親は夜に帰ってくるから平気かもしれないけど凛さんが部屋を見に来る時間が迫ってきてる、、!

早歩きで来た道を戻る

「あはっ、面白いの見ちゃった」

その後ろで誰が見ていたかも知らずに