夜──。
お風呂に入ってご飯を食べて、私はパジャマから着替えた。
下に袴を着て、上からスーツのジャケットを羽織る。
帰ったら朝風呂に入って、また学校に行く。
・・・あれ、今日は土曜日だから明日は日曜日。
休みかぁ・・・。
私は不眠症で、寝ない。
ヴィラーナと出会ってから夜に活動してるから、寝る時間がない。
まぁ、欠伸が出たりしないし、頭も働くし、それで体調崩したコトないし。
窓を開けて下をのぞくと、芝生が見える。
私の部屋は3階で、天井が各階とっても高いから窓から地面までも高い。
最悪即死だ。
すると、部屋のドアがノックされた。
「僕だけど~」
零兄だ。
着いてくるのは本気だったらしい。
「行かないの~?」
部屋に入ってきた零兄は私の服をじっくり見てから、首を傾げた。
「・・・行くけど」
窓に手を掛け、脚を乗せる。
「・・・え、ちょっ待って?窓から行くの?」
「・・・ん、当たり前」
「えー・・・僕は玄関から行くよ」
「・・・そう、じゃあハンデで私は先に行ってる」
そう言って私は窓から飛び降りた。
浮遊感と顔面に打ち付けられる風。
袴のズボンの部分がヒラヒラと揺れ、私は地面に着地した。
ふぅ・・・はじめて3階から飛び降りたけど、大丈夫そうだ。
そのまま私は庭の抜け、アジトのほうへ向かった。
引っ越して元の家から結構離れたけど、アジトはどこから向かっても行けるよう覚えてる。
少し速足で歩いていると、結構後ろに気配を感じた。
後ろを見ると、50メートルほど後ろに零兄がいる。
それをみて私は右に曲がり、またすぐに左にまがった。
そして曲がったりしてもとの道に戻る。
そしてまた少し歩くと、アジトに着いた。
・・・いや、正しくはアジトの前。
老舗の和菓子屋さんとパン屋さんの間を通ると、駄菓子屋がある。
駄菓子屋の奥には大きな旅館があって、旅館に隠れるように、アジトがある。
灰色の倉庫は木々に隠れて見えないから、場所はちょうどよかった。
当たりを見渡して誰もいないコトを確認する。
零兄はうまく撒けたようだ。
私は倉庫の扉を開けて、そっと中に入った。