「雫宮?」
目が覚めたのか。
「鈴兄は、笑ってないと。兄弟たちが心配する」
ドレスから着替えたのか、ゆるっとしたロンTを着た雫宮がじっと俺を見つめる。
「雫宮も笑ってくれると嬉しいなぁ」
冗談交じりに言うと。
「・・・っ」
その瞳がふっと緩くなる。
口角がゆっくりと上がり、俺は息をのんだ。
笑って、る。
雫宮が・・・控えめに、笑っている。
                                                                 
「・・・鈴兄も、零兄も、笑って」
                                                                 
そう言って葦零にも視線を向ける雫宮が可愛い。
雫宮の笑顔を見たのが俺と葦零だけだって知ったら伊毬たちは嫉妬に狂うだろうなぁ。
「うん」
葦零がいつもの可愛らしい笑顔を浮かべる。
それに対して、雫宮は首を横に振った。
「ホントの、笑顔」
・・・雫宮も、気づいていた。
「あはは・・・」
家族以外で気づいた人はいないはず。
だからか、葦零は苦笑いを零している。
「じゃあ」
朔冴、ごめんねー・・・と謝った後、葦零は儚げな笑みを浮かべた。
「・・・それで、いい」
雫宮は葦零の笑顔を見て、満足そうにうなずいた。