夜の繁華街。
奥に歩いていくと、大人数の気配を感じた。
この裏・・・?
近づいてみると、奥から音が聞こえた。
「・・・っぐ・・・」
「お、ま・・・ぅぎゃぁ!」
ドン、バン、グチャ、という音と悲鳴。
金属が落ちる音や何かが割れる音も聞こえてきて、俺は隙間から顔をのぞかせる。
「この程度かよ・・・」
「これで姫様狙いとは・・・ヴィラーナの下っ端にもなれませんよ?武器までもって」
地面に転がる10人以上の大人と、バキバキになったバットやスタンガン。
そして静か(?)にタタズム人の人影。
高身長で背筋がいい・・・え?
風になびいて揺れる、銀髪のような金髪。
紛れもなく、雫宮だ。
目を凝らすと、残りの2人は今日の朝に会った2人だった。
関西弁男と、敬語男。
「殺夜」
「ん-?」
「涙悪」
「はい、姫様」
「処分は任せる」
「「仰せのままに」」
同時に行って2人は大人を物陰の奥に引きずっていく。
関西弁男が殺夜で、敬語男が涙悪、か・・・。
「さ、帰ろーや」
「そうですね、今のうちに」
あと2,3時間で日が昇る。
俺は急いで繁華街から出て、3人を見ていた。
そして3人は、俺の10メートルくらい前まで来る。
「・・・気配と視線を感じる」
ぼそり、と雫宮が言った言葉にハッとした。
見つかってしまう、見つかって・・・。
「気のせいやない?」
「俺は感じないですが」
殺夜と涙悪と目が合う。
そして、背中に冷や汗がたれた。
寒気がして、震えが止まらない。
たしかに目が合って気づかれてたのに・・・。
「そう?2人が感じないなら気のせいか」
そういって街灯の下に出てきた雫宮は。
「・・・っ」
返り血でべっちょりだった。
髪や顔、服に靴。
「あーもう、姫、血ぃたれるで」
「あまりたれすぎると警察に通報されますよ」
殺夜がポケットからハンカチから取り出す。
それと同時に、雫宮の前髪から血がポトリと落ちた。
「あー・・・」
「・・・鼻血ってコトにしておきましょう」
2人は呆れたような視線を雫宮に向ける。
「ふふ・・・」
雫宮が、笑った。
初めて見る笑顔に固まってしまう俺と。
慣れたように笑みを浮かべる殺夜と涙悪。
「鮮血滴るイイ女、・・・ってね」
それ、水も滴るイイ男、だっけ?
「たしかに姫はイイ女やな」
「姫様ほど鮮血が似合う者はいないでしょう」
なに言ってんの・・・。
「あ、姫ー!」
俺の後ろから声がする。
「喰乃、来たの?」
「ん、会いたかった!」
喰乃、と呼ばれた男は焦げ茶の髪を揺らしながら雫宮に近づく。
そして返り血を見ると、発狂した。
「それキーラの血?!やー!俺の血以外付けないでーぇ!」
・・・そこ?
おそらく、キーラというのはさっきの大人のコトだろう。
「喰乃の血は付けないよ」
「なんで?!俺の血でいっぱいになってよぉー!」
・・・夜の変態いるよ、おまわりさん。
                                                                      「姫、俺の家来なよ!お風呂入りな?服洗うから!」
「いいの?ありがと」
雫宮は喰乃(?)の提案に頷き、歩き出す。
俺の横を通り過ぎたトコで、俺は4人のあとをつけ始めた。