足手まといだろう、絶対呼ばないけど。
「・・・め」
少なくとも10秒以内に喰乃を倒さなきゃ。
一番弱いのは零兄だろうから・・・。
「・・・さま」
鈴兄の次に強いのはきっと皇兄。
細いけど、すごい技使いそう。
でも腕掴まれたら終わりだね、折れるから。
弓とかは無いから遠距離って無理だし。
「姫ってば」
「姫様?」
「んぁ・・・ん、なに?」
「いや、なんかすっごい難しそうな顔しとったから」
「姫様、深く考えすぎては駄目ですよ」
ふわふわと涙悪に頭を撫でられ、私は軽く頷いておいた。
その間も涙悪は私の頭を撫でる手を止めず、恍惚とした表情を浮かべている。
「姫様の御髪は柔らかいですね・・・サラサラでとても触り心地がいい。艶もあって光に反射するのが美しい・・・」
・・・涙悪って絶対食リポ上手だよね。
「俺は目が好きやけどなー」
涙悪の反対側から殺夜の手が伸びてくる。
そっとまなじりを撫でられ、くすぐったさで笑みが零れる。
「・・・シズク」
その時、涙悪に名前を呼ばれた。
ちゅ、とリップ音が聞こえて頬にキスされたと気づく。
名前呼ばれるの久しぶりかも・・・。
私は『姫』と呼ばれてるけど、名前としては『シズク』・・・漢字で書くと『死図苦』という。
死図苦と呼ばれるときは、ヴィラーナ関係なく個人的な時。
「狡いやんか涙悪ー!」
殺夜も負けじとまぶたにキスを落とす。
その後わちゃわちゃしていると。
「姫ー!時間だよー?」
喰乃が呼びに来てくれて、スマホにキーラのアジトをマップで入れてくれる。
「行ってくる」
軽く手を振り、私は殺夜と涙悪の3人でアジトを出た。
                                                                       
それが原因であの人とキョリが縮まるなんて、思ってもなかった、から。