「……サラ?」


下校中、小さな小さな声が聞こえた。


ま、まさかっ……‼︎


振り向くと……やっぱり優希くんだった。



「ゆ、優希くん……⁉︎ どうしてここにっ……」


「大丈夫だ、ストーカーじゃない。安心しろ。それより……サラもこっち方面だったか」


優しく微笑む優希くんに、今日のことを謝らなきゃと思い出す。



「あの……優希くん……「……ごめんな、サラ」


私が謝ろうと口を開いた時、優希くんが謝ってくる。


え……?


「そ、そんな、優希くんは悪くないっ……」


悪いのは……っ。



「悪いのは、全部私っ……メガネを外されて……びっくりしたけど、あんなに冷たくすることなかった……」



冷たく当たり過ぎてしまって……嫌な思いをさせてしまっただろう。



優希くんは……ずっと、私と仲良くなろうと、歩み寄ってくれた。



なのに……その優希くんの優しさを踏みにじったのは……全部、私だ。



メガネを外したことだって、私を思ってのことだったはずなのに……。



考えれば考えるほど、私が悪い。



「いや、違う。サラは全部悪くない。悪いのは俺だ」


「ゆうき……くんっ」


どうしてこんなに、優しいんだろう。


どうしてこんな私に……優しくしてくれるんだろうっ……。


信号が赤になって、私達は立ち止まる。


優希くんの優しさに……自然と涙が頬を伝っていた。



「……っ、サラっ……どうした……? 泣いて……」


「大丈夫っ……優希くんの優しさに……泣いちゃっただけだよっ……」


「……俺は優しい人間じゃねーぞ……?」


「ううん、私は救われたの。こんな私に……優しくしてくれたから……」



今だって、泣いているのをこんなに心配してくれている。



優希くんは……優しいよ……。



「……俺が優しくすんのは、サラだけだ。誤解すんなよ。他の女になんかやるわけねーだろ」



誤解……?



つまり、私だけ……特別ってこと……?



「……っ」


そう思うと、少し顔が赤く染まった。



「……そんな反応初めてだ……可愛すぎる」



か、かわいっ……⁉︎


甘々な優希くんに、また顔がもっと赤く染まった。



もう、涙は乾いている。



「優希、くん……」


「サラ」


そっと……優希くんが私に手を伸ばす。



優希くんの手が、私の頬に触れる。



さらりと頬を撫でられた。


「……? どうしたの?」


今の仕草はなくても良い気がする……。



「……っ、ごめんな、サラ……」


私の指摘に、今気付いたって顔をした優希くん。



「ううん、大丈夫、謝らないでっ……」



もう夜遅いから、暗闇に街灯や建物の明かりが目立ってきている。


キレイで、ロマンチックな光景だった。



「サラ、連絡先交換するぞ」



「えっ? あ、うんっ」


スマホを出した優希くんに、慌てて私もスマホを出す。



「ふふっ」



優希くんの連絡先を入れると、なんだかくすぐったい気持ちになった。



優希くんはそこにいるけど、意味なく優希くんのトーク画面を開く。



「これで、いつでも話せるな」


「……っ」


ふわりと笑顔を浮かべた優希くんの笑顔がキレイすぎて、息が一瞬止まる。



……っ、び、っくりした……。



元々のお顔がイケメン……というか、整っているから、笑顔は破壊力がありすぎる。



ぼっとまたもや顔が真っ赤になる。



そんな私の反応を楽しんでいるかのように……っていうか、満足しているかのように、余裕の笑みを浮かべた優希くん。



「じゃ、俺ここだから」


「……」


「サラ? 大丈夫?」


「……っ」


や、やばい、優希くんの笑顔にのまれてた。



「う、うん、大丈夫! じゃあね!」


「ああ」


優希くんに手を振って、家に入る。



本当に……イケメンさんの笑顔は危険だっ……。



次からは用心しておかなきゃっ……。



お母さんにこの赤い顔を見られないために、「ただいまっ」と挨拶した後、しばらく鏡を見て顔の熱を覚ました。