ガラッとサラにしては似合わない大きな音を立てて、サラは教室を飛び出して行った。


絶望して、ただ伸ばした手が宙を舞う。


サラに、嫌われたかも、しれない…。


そう思うと…凄く怖くなった。


俺は、初恋をしたのに…すぐ振られるのか?


俺は、自分でも、クールだと思う。


口調も、全てが。


やっぱり…メガネを外したのが、悪かったな…。


でも、あんな美少女とは…思わなかった。



メガネ外したら絶世の美少女とか、現実にも有り得んのかよ…。


髪をほどいて、多分ウィッグとカラコンを取ったら…もっと可愛いだろう。


メガネを取ったサラは…凄くキレイで、サラは姫っていう意味もあるから、すごく名前とあっていた。


俺がサラに惚れたのは、容姿じゃない。中身だ。


前に、クラスの男どもが話しているのを聞いた。


『なあ、マジで首席って地味だよな』



地味…?



『ああ、だよな。でも頭良いし、優しいらしいぞ。ま、地味で不細工だから無理だけど、彼女とかにすんのは無理だな』


優しい…?


ちょうど、廊下の向こうで女の声がした。


女嫌いの俺はこの声を聞くと身構えてしまう。



『あ、ちょうど首席だ』


例の…?


彼女とか言ってたから、女なんだろう。


ちらりと見ると…メガネをかけて、二つ結びの地味な女が、幸せそうに笑っていた。



悪口とかが始まると、さらりと流して、人の悪いところを言うのを避けているようで…友達を大事にしている人間っぽかった。


…っ。



…可愛い。



俺が誰かに可愛いなんて思いを抱いたのは初めてで、俺は驚く。



ただ…それだけ、そいつの笑顔は可愛くて、キレイだった。



あの日のサラは、俺の頭の中にしっかりと小さな仕草さえ残っている。


サラだけは…死んでも渡さない。



俺は、どんなにライバルがいても…絶対勝つ。



サラを、俺のものにしたい。



鈍感だからな…しっかりと伝えていこう。



ただ、サラと出会う前は、寂しいとか、嬉しいとか…そんな感情はなかった。



感情がない、空っぽの人間だった。


ただ…サラと出会って、俺の世界は色付いた。



俺は、もう…奪われる前に、さっさと告白しようと思っている。



サラだけは…誰にも渡さない。