「さようなら」



や、やっと放課後だ…。



何事もなく終わって、一気に肩の荷がおりたような気がする。



「サラぁ〜! あっそぼお〜‼︎ いつものレストラン…じゃなかった、カフェで!」


空ちゃんが言ういつものカフェとは、私たちがよく行く、チョコチップクッキーがとっても美味しいおしゃれなカフェのこと。



「うん! もちろん!」


「よかった…! サラ習い事毎日詰まってるから、ダメかと思った…!」


ほっとしている空ちゃんがとっても可愛い。


確かに、私は習い事を一週間毎日詰めている。


「ピアノ、塾、そろばん、空手、柔道、ダンス、プールなんて…多才だよねっ」
「あ、ありがとう空ちゃん…」


そんなにべた褒めされると…照れるっ…。



「空って、サラ本当に大好きだよね」


友達があははと笑っている。



「もっちろん! こんな美少女逃すわけないでしょ! しかも鈍感なんて! 多才だし! すっごいモテてるのよ! サラは嘘だって思って本気にしてないけど、とっても告白されてるの!」


…そ、そんなわけないよ空ちゃーん…。



「うん、すごい美少女だよね、サラって「でっしょー⁉︎ でもごっめーん! 私もう離さないし、渡さないからね!」



ぎゅうっと強く抱きしめられる。


「ふふっ、くすぐったいよ空ちゃん「ほら聞いた⁉︎ 天使の一言!」


ふふっ、そんな事ないのに。



「…って事で、あたしが全おごりしてあげるから!」
「そ、そんな、悪いよ…」
「いいの! サラは黙ってされるがままになってなさい」


そ、そういうものなの…?


「う、うん…わかったっ」
「〜〜っ! もう! かっわいいんだから〜!」


余計空ちゃんにむぎゅむぎゅっと抱きしめられて、少し苦しいけど、微笑ましくなった。



*** ***



次の日の休み時間。



ガラッとドアが開く。



「サラいるか?」
「キャアアアっ、優希様あぁ〜〜‼︎」
「優希様ってクールだよね! 女嫌いらしいよ…!」


おっきい悲鳴っ…すごい人気っ…すごいっ、すごすぎるっ…。


しかも、女嫌いでクールなんだ…初耳っ。


優希くんは、本当に学校のアイドルなんだなあっ…。私にとっては雲の上のような存在だ。



「はいっ…ここですっ…」



ちびっ子だから、わかりやすいように手をあげてアピールする。



身長が低いから、前の人が高くて見えないかもっ…。



「さ、ら…」
「キャアアアっ…! サラ呼びっ。どういう関係っ⁉︎ 美男と地味が友達って目の保養と不細工すぎ〜〜〜‼︎」



だよ、ね…。



きっと、みんなそう思ってる…。



*** ***



ま、また空き教室につれられてしまった…。



目立ちたくないから、もうこんなことはやめてって言わなきゃ。




「あの、優希く「サラ…どうした?」



ど、どうしたのって、さえぎっちゃったら言えないよっ…。



「も、もうこんなこと、やめてほしい」
「…え?」



気まずさから、目を逸らして呟いた。



「…サラ、は…俺のこと、嫌いか?」
「…え?」



今度は、私が驚く番だった。



き、嫌い…?



「き、嫌い、じゃないよ…! で、でも…ちょっと、私目立ちたくないから…あんまり、来ないで欲しい」



私は、恐る恐る本心を口にする。



「…そうか…」



優希くんは、そう呟いて、しばらく黙った後、思い出したようにこっちを見る。



な、何っ…⁉︎



どうしても、身構えてしまう私の方を向いて、優希くんは真剣な表情をしていた。



どうし…たの…?


「…サラ、わかった。できる限り、もう行かない。でも…」


でも?



優希くんは一度言葉を区切って、しっかりと私を見据えた。



「俺は…サラに、会いたい」


…え?



私に…優希くんが、会い、たい?



聞き間違い?



「うん、私も! だって、優希くんのことが好きだから」



笑顔で、思いを伝える。



優希くんは…ちょっと強引なところもあるけど、名前の通り優しい子。



だから、もう…私の中では、友達だよ。




「…っ、それって…告、白…か?」



…?



「告白? 何でそうなるの? 私たち、友達だよね?」



何で告白ってなるんだろう…そして何で嬉しそうなのっ…?



「…え?」
「ふふっ、優希くんだって私に会いたいんでしょ? 友達なら当たり前だよ! 私だってそうだもん!」



私に新しい友達が、増えた。



優希くんにとっても、そうだ。



だから…喜ぶのは当然だよねっ。



「はあ…そういう意味に受け取ったか。今気づいたけど、めっちゃ無自覚だな…」



なぜか溜息をついた優希くん。



「無自…覚?」



「…何でもない」


無自覚って何だったんだろ…?



「そういえば、このメガネ外していいか? 暗いし、取っといた方がいいと思うけど…「あ、ダメっ、やめて…‼︎」



それ、だけはっ…。



それをやられたら…私は素直に、優希くんのこと、好きだって言えなくなっちゃうっ…‼︎



でも、すぐにかちゃっと外されたメガネ。



「…っ、え?」



大きく目を見開いた優希くん。



すぐにメガネを奪い返し、メガネを付け直す。



「…っ…やめてって、言ったのにっ…」



不細工に決まってるから、地味でいたいから…つけてたのに。不細工だって言いふらされて、しまうかも…。



「っ、ごめんサラ、でも…っ「ごめんなさい。本当にやめてください」



敬語を使って、悲しみ任せに教室を出た。



優しい、って思ってたのに…。



優希くんに…裏切られた気分だった。