彩葵(さき)は楽しみにしていた花火大会当日に熱を出してしまう

友達──というか、好きな人と一緒に約束をしていた花火大会
ピコンとひとつ通知が届いた


『マジで熱?』

─うん。ごめんね史稀(しき)


実は友だちの中でカップルが誕生しそうだったから、みんなで2人っきりにさせようと計画していた


私は熱が出たからと連絡する担当
他にも電車が思ってたより混んでて...と連絡する遅刻担当
行きたい屋台があるから...と途中ではぐれる担当
花火大会に興味がないとバッサリ切り捨てる担当


今連絡をくれたのは興味がないと言う担当だった男の子
そして、私の幼なじみであり好きな人


実は花火大会を断る口実ってだけで彼は私を花火大会に誘ってくれていた
『熱でなかったら2人で行こう。彩葵好きだろ花火。』
2人に合わなければ良いだけだからと言ってくれていたのに結局このザマ
花火はもちろん好きだけど、彼とできることなら何だって好き


「彩葵が楽しみにしいているイベントに限って熱でるの変わらねーな。」


布団に潜り込んでいるとガチャリと開いた扉から聞こえた声


「史稀...」

「これ。買ってきたから食えよ。それとほら」

手に持っていたのは手持ち花火のセット

「治ったらやろうな」

と言ってくれた彼にうなずいたのは先週


今日は約束の花火の日
浴衣を着てみたりして、スイカを切って彼を待つ

今日こそ伝えて、脱、片想い!!
振られたとしても気まずくならないように笑顔の練習はばっちり

線香花火の火が落ちなかった方の言うことを聞くのはどうかと言い出した彼
負けてられないと思っても運は味方してくれなかった

私ができることだったら何でも聞くけど無理難題だったらどうしよう
もし、好きな人がいるから協力してくれとかだったら?

なんてぐるぐる考えていたら彼が口を開いた


「彩葵、好きだ。付き合ってほしい。」

──今、好きって言った?
史稀が?私を??

「彩葵、これが俺の願い。凹むから頼む、なにか言ってくれ」

と暗闇でもわかる照れて焦る史稀の口調と染まっている頬

きっと私の真っ赤具合もわかってるはずなのにイジワル
今、この私の反応自体が答えみたいなものじゃん
でも私も告うって決めてたから

だから

「史稀。私だって史稀が好きだよ。大好きだから付き合ってください。」


───fin