「これと・・・」「あとこれと・・・」「これも・・」と、無意識にあれもこれもとトレーにパンを乗せる。




こんなに一人で食べきれるわけないのに。



今日の午後、成宮くんのお誘いを引き受けていたらこんな思いはしなかったのかな。



そもそも休みの午前中に、わざわざすっぴんで出掛けるなんて、私には合わないことをしたのよ。



もう、自分に合わないことを無理して行うのはやめておこう。



pon♪



バッグから通知音が鳴り、振動が肌に伝わる。



お会計を無事済ませ、お店をでてすぐ、確認をするために立ち止まる。



「成宮くん?」



『やっぱ会いません?俺会いたい』



敬語とタメ語を交互に使うという難易度のあざとさを見せつけられることとなる25歳。



とっても生きづらい。



『今からは無理かな、ごめんね』



返信は早い、遅い、そんな駆け引きもうできる歳ではないし、私は駆け引きツールを適当に使用することにしたのだ。



よくドラマでメッセージがきてすぐに既読をつけて返信するヒロインを見ると、世間ではそういうものなのかと勘違いしてしまう。



が、世間の恋してる人半分は、駆け引きしている。と思う。



pon♪



『お願い!楽しいと思うからまじで』



強引な誘いなのに、なぜ、どうして、こんなに迷っているのだ25歳。



もう、先ほどの集団の子たちとは別れたのだろうか。



あの女の子、距離が近かったし仲良さげだったし・・・気になるし・・・。



あの子のこと、さりげなく聞いてみたい、お誘い承諾しちゃおうかな。



「え?」



いやいやいや、ないないない!



私は学生じゃないのよ!?なに、恋で悩む乙女みたいな想像して、何言っちゃってんだ私ってば。



清く生きろ、25歳!



『ごめん!無理!』




prrrrr...

prrrr.......



「え、うっそ待って電話!?」



断りすぎて、とうとう呆れられたかしら。



私は渋々、成宮くんからの電話に出る。



01秒という数字を見つめ、私は耳にスマホをつける。



「・・・えっと、はい」



「いやまじで後ろ見てみ?」



「え?」



「俺今すっげえミラクル起きてると思うわ。
会えるとか嬉しすぎ」