「・・・スマホ、ずっと気にしてる」




会社の外のベンチに2人、落ち着いたように座る。




「私やらなきゃいけないことがあるんだよね」



まるで、英雄が言うようなセリフを自分が真顔で言っていることにほんの少し恥ずかしくなる。



「それが解決したら、返事くれるの?」



「分かんない・・・ごめん」



「まあ、これ、ドラマの展開だったらヒロインくらげが炎上してるかもね」



「え?」



「長引かされるなら俺、振られた方がマシだからな」



「・・・」



「うそうそ冗談、そんな顔すんなって」



5歳も年下だという事実を疑ってしまうほど落ち着いたセリフに英雄は恋に落ちてしまうんだ。



夏に合う無邪気な笑顔と、男らしいが優しめの声色、ずっと傍にいてほしい。



だけど、やっぱり、佐倉さんとのことをはっきりとさせなければ、成宮くんには申し訳ない気持ちになるし、モヤモヤがずっと続いて、また取り返しのつかないことをしてしまう気がするから。



だから、告白の返事はまだできない。



もちろんそれもあるが、もっと返事を長引かせてしまうワケは他にもある気がする。



まだ、確定ではないから言葉にはできない。



だけど、目の前にいる成宮くんの横顔は独り占めしたいよ。



25歳にもなって私は、こんなにも人に高慢になり自分勝手になっている。



いつかきっと、真剣に恋をし純粋に愛を見つけている人に怒られてしまうのだと思う。



それくらいのことをしているのではないか、だけど、だけど・・・と、葛藤している自分が情けない。



「今日、けじめつけてくるから」



「けじめ?」



「そ、だから夜、電話する」



「まじで!?待ってるよ俺」



「はいはい」



成宮くんに好きと言われ、私への気持ちが露になったからなのか、自分がなんだか上から目線で接しているような気がして吐き気がした。



だけど、成宮くんには悟られたくなくて心を閉じた。



恋愛に向いていない、なんて気づかれてしまえば、成宮くんが私に対する想い全て否定していたと勘違いされてしまう。



バレてはいけない。



自分自身も強くならなくては。



私はそう決意をし、佐倉さんにメッセージを送ったのだ。