「じゃ、じゃあちょっと私、電話してくる。元気出たから」



「・・おう」



「じゃあね、ごめんね」



腕を離し、手を振る。



やっと見れた成宮くんの顔は私と同様、顔が赤かったのは気のせいなのだろうか。



ジッと見つめることができないから、私はすぐに違う方向を見つめ成宮くんから離れる。



本当はもっと成宮くんと一緒にいたい。



成宮くんといることが私の唯一の落ち着く時間だったんだ。



まっすぐな感情で動く姿勢や、素直で優しい性格、恋愛が苦手な私が異性にときめくことはこの先一生ないだろう。



だから、離れたくない。






「・・・!?」





心臓が跳ね上がるのを感じる。



グイッと腕を引っ張られたその感覚に、私はまたもや初めての感情を味わっているのだ。



腕を引っ張られ、そのまま私は暖かく大きな身体に包まれる。



成宮くんに抱きしめられていることに気がついた頃には、鼓動が早くておかしくなりそうだった。



「成宮くん・・・?」



成宮くんの鼓動の音もほのかに伝わる。



「くらげ」



「なに・・・?」



「くらげ」



「っうるさい・・・」



「好きだよくらげ」



「・・・・・・え?」



「なんだよ聞こえてただろ」



「うそ」



「嘘言ってどうすんだよ」



「好きなの?」



「好きだよ」



「私のことが?本当に?」



「ああ、そうだよ。くらげは」



「言えない」



「なんでだよ」



「恥ずかしくて言えないよ、みんな見てる」



「俺は気持ち伝えたんだからな」



「はいはい、よくできました」



「だから冷たくするなって言ってんの」




私は強気で返すことが精一杯の愛情表現だった。



抱きしめられたまま、私の頬には大粒の涙で溢れかえっていた。