昨晩の出来事でか、眠りが浅く、気分がよくない。
事務所に一番に出勤した私は、大きなあくびをする。
昨晩で一気に思い出された佐倉さんとの出来事は、時間が解決してくれるようなことじゃないんだ、と実感する。
「成宮くん出勤なわけないよね~」
スマホの電源をつけないままの私は、何食わぬ顔で椅子に深く座り、シフトを見つめる。
意外にも冷静な行動をしている私が、不思議で仕方がない。
「休みか・・・」
「誰が?」
「・・・・っ!」
耳もとで声がするものだから、ブルッと背筋が震える。
「誰の話?」
「な、りみやくん・・・」
「俺!?」
昨晩の小さな背中が嘘のように、太陽に勝る成宮くんが目の前に現れた。
好きと声にだしてしまいそうになるのを抑えるのが精一杯であった。
「ありがとう」
「ありがとう?」
「おう、俺のこと考えてくれてたんでしょ。ありがとう」
「え、ああ、うん」
「てか朝、LIMEしたんだけど」
「え!うっそ、ごめん。電源つけてない」
「忘れた?なんかあったらまずいし電源つけときなよ」
「そう、だね。ごめん」
「おう」
そう言い、隣に座る成宮くんをじっと見つめてしまう。
「なに、どした」
フッと笑う成宮くんはやっぱりカッコいいのだ。
「なんでもない、目、泳いでるよ」
「泳いでねえよ」
「ふふっかわい」
こういうやりとりしているだけの日常を望んでいるの。
お願いだから、もう、考えるのをやめたい。