「じゃあ、おじゃましました」



玄関で靴を履きながらお礼する成宮くんの背中が少し小さい。



そんなに私の家に泊まりたかったのか、と、都合よく考えついてしまう私がとても怖い。



「うん、送ってあげなくて大丈夫?」



「おう、大丈夫だよ」



「・・・・あ、あの、次って~いつ?出勤は」



「シフト見ないと分かんない」



「だよ、ね・・・あっはは、分かったごめん」



先ほどとはうって変わって、冷たい態度の成宮くんに私は委縮してしまうのだ。



「なに?なんかあんの?」



「ん?ないよただ聞いただけ」



「あそ?」



「うん、じゃあおやすみなさい」



「おう、じゃあな」



「はい」



一段落ついた会話の中で、私たちは一度も目が合わなかった。





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成宮くんが帰ってからまだ数分しかたっていないのに、なぜか部屋の中が静かに感じて悲しくなっているのが分かる。



余韻とか、ないんだな。



もう完全過去なんだな。



色んな意味で早く帰ってほしかったのは事実。



だけど、何故かスマホの通知画面を気にしてしまう。




「さっきはありがと」とか「ご飯おいしかった」とか「次は火曜日出勤だった」とか
メッセージ、送られてこないのかなって。




メッセージなんか来るはずないのにね。



待ってしまう私がとても情けない。



このモヤモヤをどうにかして感じたくなくて、テレビをつける。




だけど、「こんなタイミングで・・・」と、つけてすぐに映るチャンネルが恋愛ドラマで、ある意味地獄だ。




売れっ子女優とベテラン俳優がちょうどキスをするシーンが映し出され、私はチャンネルを変える暇もなく目を瞑ることが精一杯の対抗だった。










pon♪




「・・・・!」



うそ。まさか。



スマホの画面を下にしていたから、ドキドキは続いたままスマホの画面を見ることになってしまう。




どうしよう、私、これで公式メッセージだったらどういう感情でいればいいのかな。




グッと目に力を入れ、スマホを掴む。



薄目を開け、画面を見るのはいつものことだ。





『久しぶり。元気?今度電話してもいいかな?』 




うそ。