「あー鈴木さんって人でてきました」



「担当は?」



「柏木さんです」



「それだ!でかしたわよ!住所、データいますぐ送って!」



「あっはい!」



「ありがと~助かった!」



「あ!あの、俺今神子谷さんの助けになった?」



「もちろんだよ、私急いでるから切るね」



「ああ、あと」



「な、なに?」



「カッコいいっす!頑張ってきてください!じゃ!」



プツっと切れた電話。



「いや、成宮くんから切ってどうすんのよ・・・」



住所が送られてきたと同時に、私はタクシーを運よく拾うことができた。



なんか今日、良い感じじゃない?



「いやいや」そううまくいくものじゃない、と現実を見つめなおす。



「あ、えと~〇〇まで向かってくださいお願いします」



タクシーの中で息を整える。



柏木さんを助けに行く。



柏木さんが私に辞めないように背中を押してくれたのだから、今度は私が柏木さんのことを助ける番だ。



「ふぅ~」でも、やっぱり緊張する。



仕方がない、人間だもの。



鈴木様、お得意様でもあるが、厄介なクレーマーと有名で、誰も電話対応をしたがらないほどだ。



そんな人に、今から直接会うなんて、勢いででしゃばってしまったが大丈夫だろうか。



いいや、そんなこと言っていられない。



柏木さんは今一人で頑張っているのだから、私が助けに行くと決めたんだ。行くと決めたんだ。自分で。



「あ!ここで結構です!」



「そういや、ここ二回目だな」



「え?」



タクシーのおじさんが一軒の自宅を見つめる。



「いやさっきね、あなたと同じくらいの年齢の子が泣きそうになりながら降りてったんでね。
どうしたの?って聞いたら、ここで私が逃げたらどうなるのかな~とかなんとか小さい声で言ってたんだよ。
お姉さん、大丈夫なんか?」



「・・・・大丈夫ですよ、私が助けに行ってきますので」



「おーおー若いのに頼れるね~あの子の上司か?」



「いいえ、ただの派遣です!そいじゃ!」



早く行かないと。