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着いてしまった。



いや、着かなきゃいけないのだけど。



着いてしまったけど、一旦は落ち着ける。



なぜなら、柏木さんの出勤はいつも私より遅いから。



それならきっと、成宮くんもまだ来ていないはずだ。




事務所を開けた瞬間、ひんやりとした空気に体の熱さが吹き飛ぶ。



あれ・・・・エアコンついてる・・・なぜ・・・



事務所には誰もいないし、いた感じもしない。



でも、目に入ったあれを見た瞬間に私の体は固まって動けなくなる。



いつも横のデスクでからしか見たことがないリュックが今目の前の視界に入っている。



「きてる・・・じゃん」



よく見れば、柏木さんのバッグを入れている引き出しが少し空いてるし、つまりそういうことじゃんか。



「健気かよ・・・って。ほんとになんなの」



覚悟していたはずなのに、連絡先を交換するだけのために健気に早く出勤する成宮くんに、傷んだ傷をさらにえぐられた気分になった。



涙腺が緩みそうになったが、グッと拳に力を入れて耐える。



ここは、大人の余裕を見せなくては。



「あれ、おはよ」



・・・・・・!!



振り返ると、眠そうにあくびをする成宮くんの姿が一人。



ひとり・・・・



「ドア閉めて?涼しさなくなっちゃう」



「あ・・・ごめん」



「いいよ」



いつも通りの成宮くんに、なぜか私もつられていつも通り接することができている。