細野主任が言った言葉にムッとしてしまったのはきっと図星であったことと、きっとお酒のせいなのだ。


私がこんな風に声をあげることはないのだから。


全部全部お酒のせいなのだ。


だから、ほらね、やっぱり、お酒の飲む場など行きたくなかったのに。


お酒のせいで色んな自分が表にでてきてしまうのだから。




シャツの袖をまくり上げ、パンツの裾をも思いっきりまくる。



大きなジョッキを片手に持ち、わざとらしく音を立てイスを後ろにひいて立つ。





「神子谷!!!!飲みまーーーーーーーす!!!!!」




皆が目を丸くさせ、私に注目する。


そりゃそうだ。


こんなこと人生で初めてなのだ。


周りの雑音に話し声は聞こえない。


音がこもり、全てがスローモーションになったこの世界に、私は自由であったことを確かに感じた出来事となった。



「ええ、ちょっと待てって、待って!神子谷さん!」


成宮くんの焦ってつい笑ってしまっている、リアルな表情が見えたその瞬間、私の記憶は途絶えた、らしい。