ケントにすぐさま電話をかける。




『はい』と気だるげな声が電話越しに聞こえる。



そんなことお構いなしに僕は問う。



「なあケント、汐里、お前に何頼んだん?」



『ああ、くら・・・神子谷さんいたら連絡頂戴って言われたんだよね~』



「なんで教えた」



『暇だったし』



「はあ!?」



『おおっと、嘘だよ嘘嘘、そんな怒るなよ。俺お前に期待してーんの。
せっかく最上がお前のこと諦めるって言うから、俺はくら・・・・神子谷さんとお前を
応援したいって思ったんだ~』



「だから乗ったのか?」



『そっ♪』



「はあ、お前なあ」



『お前も最上の覚悟に答えてやったら』



「・・・うるせえよ」



『ふっ、じゃあな』




ツーツーと音が鳴るスマホの画面を数秒見た後、僕は走った。



余計なことなど考えずに走った。



くらげに会いに行く。



そう決めた僕の心には、確かな恋心と共に一直線にくらげを追い求める強い愛があった。



はぁ・・・はぁ・・・ッ


ッはぁはぁ・・・はぁ



僕は息の続く限り神社や商店街を走り続けた。



みんなに見られようが関係ない。



僕はくらげを探している。



気持ちに嘘などついてたまるか。この想いは無駄にしたくない。



振られても好きでいる自分は、傍から見たら気持ち悪いかもしれない。



でも、お礼も言わずにバイトを辞めたことだけは直接会って謝りたい。



そしたら僕、ちゃんと前向けると思うから。



こんなに誰かを好きになったことがない僕にとって、くらげとの出会いはなかったことにできない。



それくらい、魅力的な人で、一目惚れだった。



それくらい、好きだったから。



花火が終わる前に、お願い。





くらげ_______